□経済

再稼働容認派の現職3選 原発立地の柏崎市長選―新潟

新潟県柏崎市で17日に行われた市長選において、無所属の現職である桜井雅浩氏(62)が3選を達成した。桜井氏は柏崎刈羽原発の再稼働を容認する立場を表明しており、再稼働に関する花角英世知事の決定が今後の焦点となる。市長選では、条件付きで再稼働を認める桜井氏に対し、反対を訴える無所属新人の阿部由美子氏(62)らが挑んだが、敗れた。刈羽村長選では、無所属現職の品田宏夫氏(67)が無投票で7選を果たし、彼も再稼働に肯定的な立場を示している。柏崎刈羽原発は安全確認検査を6月に完了し、再稼働の準備が整い、地元自治体の同意が最後の障壁となっている。柏崎市と刈羽村以外の周辺自治体の中には慎重な姿勢を示すところもあり、地元同意が完全に得られるかはまだ不確かである。


脱炭素投資「一定のインフレ圧力に」 高まれば金融引き締めも

日本銀行の植田和男総裁は9日、スイス・バーゼルで開催された国際決済銀行(BIS)主催の討論会に参加し、脱炭素投資への政府補助金が短期的にはインフレ圧力をもたらす可能性があるが、物価上昇率が2%未満である現状ではその圧力を一時的に吸収できると述べた。しかし、インフレ圧力が特定の水準を超えた場合は、金融政策の引き締めが必要になるとも指摘した。

植田総裁はまた、気候変動が実体経済と金融政策に与える影響について、欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁らと議論を交わした。


福袋で「非日常」体験を ゾウ飼育員や豪華客船

大手百貨店は来年の初売りで「体験型」福袋を強化する予定です。「非日常を求める声に応えて」(高島屋)として、動物園の飼育員体験や豪華客船クルーズなど、様々な企画を用意しています。一方で、高物価に直面する消費者を引きつけるため、食品を中心にコストパフォーマンスの高い商品も目立っています。

東武百貨店池袋本店(東京都豊島区)では、小学生とその保護者(5組10人限定)向けに「東武動物公園 飼育員おしごと体験福袋」(5000円)を提供します。ゾウの部屋の清掃やホワイトタイガーへの餌やり、巳年に因んだボールパイソンとの記念撮影が可能です。「笑顔あふれる一年になってほしい」と同店は述べています。

高島屋は、体験型福袋を前年比で増やしています。7泊8日の韓国済州島クルーズ旅行(1組2人用)を405万円で、また「大相撲 朝稽古ツアー福袋」(10組20人、2025円)も用意しており、相撲部屋での稽古見学と力士特製のちゃんこ鍋を楽しめます。

価格に魅力を感じる福袋も豊富です。「令和のコメ騒動」を受けて、西武秋田店(秋田市)は「あきたこまち」の米俵1俵(60キロ、3個)を2万2250円で提供します。

松屋銀座(東京都中央区)は、調味料や缶詰など8000円相当の商品を詰め合わせた「食品てんこ盛り福袋」(30個)を3240円で、新社会人になる学生向けにスーツやネクタイ、名刺入れを含む福袋(3個)を通常価格より約60%オフの5万5000円で販売し、新たな人生のスタートを応援しています。


賃金改定4.1%増、過去最高 24年、業績回復や人手不足で

厚生労働省が28日に発表した2024年の「賃金引き上げ等の実態に関する調査」によれば、従業員1人当たりの平均賃金改定率は4.1%の増加(前年は3.2%の増加)であった。賃金を「引き上げた・引き上げる」と回答した企業の割合は91.2%(前年は89.1%)で、企業の業績回復や人手不足を背景に、1999年以降で最高値を更新した。

改定額は月額で2524円の増加となり、平均で1万1961円になった。賃金引き上げの主な理由は「企業の業績」(35.2%)が最も多く、「労働力の確保・定着」(14.3%)がそれに続いた。

基本給の底上げを行うベースアップの実施状況は、管理職で47.0%、一般職で52.1%と、2004年以降で最も高い実施率を示した。

規模別では、従業員1000人以上の企業では4%台の改定率を、従業員100~999人の企業では3%台の改定率を記録した。労働組合がある企業では改定率が4.5%で、ない企業では3.6%だった。業種別では、金融・保険業や製造業などが4%を超える一方で、医療・福祉や教育・学習支援業は2%台に留まった。

この調査は7月から8月にかけて、従業員100人以上の企業を対象に行われ、1783社から有効な回答を得た。


中古車販売2社に立ち入り 保険金不正の疑い

金融庁は、中古車販売の「ガリバー」を運営するIDOM(イドム)と、グッドスピード(名古屋市)の2社に対して立ち入り検査を実施していることが21日に明らかになった。これは、旧ビッグモーター(BM)の保険金水増し請求問題を受け、これら2社にも不正請求の疑いがあるためである。内部調査が進んでいない状況から、金融庁は立ち入り検査を通じて事実を急いで明らかにしようとしている。

ガリバーは、BMと同様の不正請求に加えて、自動車保険の契約と引き換えに中古車の販売価格を不当に割引するなどの疑いが持たれている。損害保険会社は詳細な調査を要求していたが、進展は見られなかった。

グッドスピードは昨年、不正請求の疑いがあるケースが120件を超えると発表したが、調査範囲が限定的だったため、損害保険会社はさらなる調査を求めている。


中国輸出入の伸び鈍化 日本向けは7%減―9月

中国税関総署は14日、9月の貿易統計を発表し、輸出が前年同月比2.4%増、輸入が0.3%増となったことを明らかにした。これらの伸びは前月に比べて鈍化しており、特に日本への輸出入の減少が顕著であった。

輸出の伸び率は8月の8.7%から大幅に低下し、税関総署の幹部は記者会見で、中国製電気自動車(EV)に対する関税引き上げを決定した欧州連合(EU)や米国を指して、「一部の国々が我が国の製品に対して貿易制限を行っている」と述べ、これが貿易にとって障害となっているとの見解を示した。

日本向けの輸出入は共に7.1%の減少を記録した。中国では、6月に江蘇省蘇州市、9月には広東省深セン市で日本人が襲撃される事件が相次ぎ、短期訪中ビザの取得が欧州諸国などに免除される中、日本は非免除状態が続いている。日系企業からは、「日本は歓迎されていない」「対中投資を増やすことはできない」との声が増えている。


米アポロ、日本の製造業買収に意欲 大型案件増加で

アポロ・グローバル・マネジメントの日本代表、岡本哲士氏は最近のインタビューで、製造業を中心とした大型買収への意欲を表明しました。日本における10億ドル以上の案件が増加する中で、差別化が重要であると強調し、出資と融資を組み合わせる柔軟な資金提供を通じて国内での事業拡大を目指しています。

アポロは2024年度末までにパナソニックホールディングスから、カーナビ等を扱うパナソニックオートモーティブシステムズの80%の株式を取得する予定です。同社の昨年度の売上高は約1兆4919億円で、買収総額は3000億円を超える見込みです。岡本氏はパナソニックHDと協力して競争力を高め、最終的には上場を目指すと述べています。

岡本氏は、日本の製造業の生産技術と製品の競争力を評価し、企業が事業構成の見直しを始めていることを指摘しました。変革期にある企業に対して包括的な解決策を提供する意向を示しています。

アポロは非上場企業への投資とプライベートクレジットに力を入れており、岡本氏は大型資金提供へのニーズがあり、日本企業の資金調達の多様化を支援する意向を表明しています。

アポロは2018年に日本での活動を開始し、昭和電工や三菱マテリアルのアルミニウム事業への投資実績があります。


食品値上げラッシュ到来 小売り大手、低価格品拡充も

10月には飲料や食用油など、日常生活に不可欠な食品の価格が一斉に上昇し、家計に重い負担がかかる見込みです。帝国データバンクの調査によると、単月での値上げ品目数は2,911品目に達し、今年の最多記録を更新しました。物価の上昇が続く中、小売業界の大手企業は低価格商品の取り扱いを増やすなど、節約を心がける消費者の需要を取り込むために奮闘しています。

総務省のデータによると、生鮮食品を除く全国消費者物価指数は、8月まで36ヶ月連続で前年同月比プラスを記録しています。一方で、7月の家計調査では、2人以上の世帯あたりの実質消費支出が0.1%増加し、3ヶ月ぶりにプラスに転じましたが、その増加はわずかなものでした。長期にわたる物価の高騰により、消費者の間で節約志向が定着していると帝国データは分析しています。

消費者が出費を控える傾向が強まると、メーカーだけでなくスーパーマーケットなどの小売店も苦境に立たされます。商品価格の上昇により売上高は増加しているものの、日本チェーンストア協会の牧野剛専務理事は「購入点数は増えていない」と述べ、憂慮の表情を見せています。

手頃な価格の商品を求める消費者のニーズに応えるため、イオンは9月に食品などのプライベートブランド商品の一部を最大20%値下げしました。セブン-イレブン・ジャパンも、おにぎりや弁当などの低価格帯商品の取り扱いを拡充しています。青山誠一常務は「価格を重視する顧客が増加しており、経済性を重視する傾向は今後さらに強まる」と述べ、迅速な対応を進める姿勢を示しています。


日韓協力「象徴」に節目 ポスコと資本関係解消へ―日本製鉄

日本製鉄は、四半世紀にわたり韓国ポスコホールディングスとの資本関係を解消することになった。ポスコは1973年6月に韓国南東部で浦項製鉄所を稼動させ、「漢江の奇跡」と称される高度経済成長期に鋼材を供給し支えた。日本製鉄は、前身企業が同製鉄所の設立を支援し、その後株式の相互保有へと発展させ、日韓経済協力の象徴となっていた。脱炭素化などの分野での協力は続けるものの、これは大きな転機となる。

1965年に日韓が国交を正常化した際、日本は植民地支配に関する請求権問題を解決するために韓国に経済協力資金を提供した。この資金は浦項製鉄所の建設に充てられ、日本は技術支援を行った。

日本製鉄は、新日本製鉄時代の1998年にポスコが民営化された際に、相互に株式を取得した。2000年の戦略的提携の開始や、2006年の追加出資を経て、一時はポスコ株の約5%を保有していた。

2000年代には、欧州で当時世界最大のアルセロール・ミッタルが設立されるなど、鉄鋼業界では合従連衡による規模拡大が進んだ。新日鉄とポスコは、鉄鋼業界が激動の時代を迎える中で、半製品の相互供給や技術交流、原料購買などで協力を拡大した。

しかし、2012年には「方向性電磁鋼板」の製造技術を不正に取得したとして、新日鉄がポスコを提訴した。2015年に和解するまで、関係は緊張したものが続いた。その後、2016年に資本効率向上を理由にポスコ株の一部を売却し、最終的には全株式を売却することとなった。


日立、エヌビディアと鉄道保全 AIで不具合を早期把握

日立製作所の鉄道部門である日立レールは、24日に米国の半導体大手NVIDIAのAI技術を用いた鉄道インフラの予防保守サービスを開始したと発表しました。車両に搭載されたセンサーから収集される車体、レール、通信機器のデータをAIが分析し、故障の早期発見に寄与します。これは両社が鉄道分野で共同作業を行う初めての事例です。

部品の交換を効率化することで、列車の修理費用を最大15%削減する効果が期待されます。日立レールは以前からデジタル技術を活用して保守作業の効率化を進めてきましたが、新サービスによりデータ処理速度と分析精度が大幅に向上します。担当者は「10日かかる作業がほぼリアルタイムで完了する」と述べています。

従来、鉄道の保守管理は経験豊富な技術者に依存していましたが、人材不足が課題となる中でITの活用が進展しています。日立はNVIDIAとの協力を強みとして、世界中の鉄道事業者に新サービスを提供する計画です。

日立製作所は3月にNVIDIAとの広範な事業分野でのAI活用に関する取り組みを発表しました。今後もエネルギーや産業分野でのサービス展開を目指しています。


日鉄と統合実現に自信 USスチールCEO

米国の鉄鋼大手USスチールのCEO、デイビッド・ブリット氏は17日、デトロイトで開催された会議に出席し、日本製鉄によるUSスチールの買収が実現するとの確信を示したと、ロイター通信が報じています。この買収案は、労働組合の支持を集めるために、米国の民主党と共和党の大統領候補から反対されています。

米国政府の外国投資委員会(CFIUS)は、安全保障を理由にこの買収案を審査しています。ブリット氏は、審査プロセスが「非常に厳格である」としながらも、「プロセスを信頼し、尊重している」と述べました。また、この統合が米国の安全保障を強化するとも強調しました。


自治体に疑似サイバー攻撃 セキュリティーの弱点検証

 総務省は2025年度に、自治体のネットワークに対して模擬的なサイバー攻撃を行い、侵入を試みるテストを実施する予定です。このテストはシステムの脆弱性を確認し、セキュリティの向上を目指すものです。予算要求には、具体的な金額を示さずに新たな項目として含められました。

最近では、KADOKAWAがランサムウェアに感染し、約25万人分の個人情報が漏洩した事例が発生しています。

各自治体のシステムは、外部からの不正アクセスや怪しいメールを検知し、ネットワーク内への侵入を防ぐ対策を施しています。これは、2015年に起きた日本年金機構の情報漏洩事件を受けた対応です。

しかし、セキュリティに予期せぬ脆弱性が存在する場合、住民の個人情報漏洩などのリスクがあります。そのため、インターネットを通じた攻撃を想定したペネトレーションテストを実施し、弱点を明らかにすることが計画されています。この方法は、政府機関で行われているテストを基にしています。

総務省は自治体と協力してテストを行う方針で、参加する自治体の課題や要望を聞き取り、模擬攻撃の対象や手法について事前に十分調整した後、住民サービスに影響を与えないように進めます。


中小賃上げ、投資促進へ税優遇 来年度税制改正で要望

日本商工会議所は、2025年度の税制改正に関する意見案を9日に公表しました。この案では、中小企業の収益力を強化し、賃金の上昇と投資を促進することが日本の持続可能な成長に不可欠であると強調しています。また、2024年度末に期限が切れる「中小企業経営強化税制」を含む税制優遇措置の延長と拡充を政府と与党に要求しています。

経済産業省は、「100億円企業」への税制優遇を通じて中小企業の成長を支援することを要望しています。

意見案では、積極的な賃上げと投資のための資金を確保するために全ての施策を動員する必要があると述べています。中小企業が設備投資を行うための経営強化税制については、期限の延長だけでなく、税制優遇の対象となる設備の範囲を拡大し、成長志向の企業に対する税額控除率を現在の10%から引き上げることを目指しています。


コメ輸出、過去最高 海外需要拡大、国内では品薄―1~7月

農林水産省は3日、1月から7月までの農林水産物・食品の輸出実績を発表しました。その中でコメは、金額ベースで前年同期比29.1%増の64億6200万円、数量ベースでは23.0%増の24469トンと、どちらも同期間としては過去最高を記録しました。日本食レストランなどでの需要が増加しています。

政府はコメの輸出促進を通じて需要拡大を図っています。国内では供給が不足していますが、年間の需要量約700万トンに対して輸出量はまだ少ないです。坂本哲志農水相は同日の閣議後の記者会見で、「2024年産の米は全国的に順調に育っており、出荷も前倒しで行われる見込みです」と述べ、コメの供給不足は徐々に解消されるとの見通しを示しました。


地方交付税3000億円増 25年度予算概算要求

総務省は26日、2025年度の予算概算要求において、自治体への地方交付税の配分額を2024年度予算と比較して3,083億円増の18兆9,753億円とする方針を決定した。これは国の税収の増加が予想されるためである。

地方譲与税を含む地方税収は、約1兆6,000億円増の約47兆1,000億円と見込まれている。これは内閣府が発表した経済財政の中長期試算における名目成長率などを基に算出された。財源不足を補うための臨時財政対策債(赤字地方債)は約3,000億円増の約8,000億円となる。交付税や地方税などの一般財源の総額は、約1兆3,000億円増の67兆円程度になると予測されている。

総務省は毎年夏に次年度の地方財政収支の仮試算を作成し、その中で交付税の配分額を計算する。これは機械的な試算であり、年末にかけての予算編成過程で数値が変動する可能性がある。


「原チャリ」惜しむ声 環境規制で存続厳しく―小型・軽量の入門バイク

愛されてきた原付き1種(50cc以下)の生産が環境規制の強化により困難になり、多くの利用者がその終焉を惜しんでいます。メーカーは125cc以下の新基準原付きや小型電動バイクなどの代替品を提供していますが、小型で軽量な入門バイクを懐かしむ声も多いです。

「50ccのエンジン音に魅力がある。なくなるのは寂しい」と東京都足立区でバイク店を営む新保幸夫さん(44)は語ります。彼は高校入学時に中古の「ジョグ」を購入し、友人たちとツーリングを楽しんでいました。今でも30年前のモデルが修理に来ることがあり、「生産終了後も50ccバイクに乗り続けてほしい。サポートは続ける」と述べています。

2022年にホンダ「スーパーカブ」で日本一周をしたSNS発信者の「たぴこ」さん(26、氏名非公表)は、「ゆっくり走って好きな場所で停められる」という原付きの特性を活かし、旅をしながら地元の人々と交流しました。「カブのおかげで多くの人に会えた。この経験が若い世代に受け継がれないのは残念だ」と語りつつ、「カブは頑丈なので一生乗り続ける」と決意しています。

原付き1種の生産が困難になったのは、2025年11月に予定されている排ガス規制の強化が原因です。政府は制度改正の詳細を詰めており、小排気量の50ccは規制を満たすのが難しいため、主要メーカーは新車の生産を段階的に終了し、新基準原付きへの移行を進めています。

新保さんは「原付きに比べて、新基準原付きは車体が大きく、電動バイクは価格が高い」と指摘し、代替品が適切かどうか疑問を投げかけています。

環境省の担当者は「大気環境を改善するための措置であり、現在乗っているバイクには影響がないので、引き続き大切に乗ってほしい」とコメントしています。経済産業省も「環境規制を遵守しつつ、原付きの魅力を保持できるように制度改正を進めている」と述べています。


訪日客免税、転売防止で対策 出国時に確認後返金へ―政府・与党

政府と与党は、訪日客を対象にした消費税免税制度の根本的な見直しを進めている。これは、免税で購入された商品が日本国内で転売されている疑いがある事例が増えているためである。転売を防ぐため、訪日客が出国する際に購入した商品の持ち出しを確認し、その後で免税額を返金する新制度を導入する方針だ。

政府と与党は、2025年度の税制改正大綱に、新制度の導入時期を含む詳細な計画を盛り込む予定だ。

消費税は国内で消費される商品やサービスに課税されるため、訪日客が国外へ持ち出す商品には消費税が免除されている。国内での消費や転売は免税の対象外である。

現行の免税制度では、消費税を差し引いた価格で商品を購入できる。訪日客は免税店で買い物をする際、パスポートを提示することで消費税が免除される。税関は、店からの購入記録を基に、訪日客が免税商品を国外に持ち出しているかを確認する。

しかし、多くの訪日客が税関検査をせずに出国している。2022年度には、免税制度で1億円以上購入した訪日客57人のうち、1人のみが免税商品の持ち出しを確認できた。残りの56人は消費税を支払う必要があったが、55人は納税せずに出国した。滞納額は約18.5億円に上る。

このような状況を受け、政府と与党は免税店での購入時に消費税を含む価格で商品を購入させ、税関での購入記録と持ち出し商品の照合後に消費税相当分を返金する方式への変更を検討している。新しい方式では、クレジットカードや電子マネーを使ったキャッシュレス返金が検討されている。


個人情報25万人の流出確認 サイバー攻撃で―KADOKAWA

KADOKAWAは5日、グループに対するサイバー攻撃により、約25万4241人分の個人情報が流出したと発表しました。この中で、約18万6269人分は通信制高校「N高校」を含む学校法人角川ドワンゴ学園の関連情報です。この調査結果は個人情報保護委員会に報告されました。

流出が確認された個人情報には、「ニコニコ動画」を運営するドワンゴの全従業員、クリエイターを含む取引先の氏名、住所などが含まれています。角川ドワンゴ学園に関連しては、在校生、卒業生、保護者、出願者の一部の個人情報が漏洩しました。また、ドワンゴの取引先との契約情報も流出しています。

社外の専門家による調査では、フィッシング攻撃などによって従業員のアカウント情報が盗まれたことが原因であると推測されています。盗まれたアカウント情報を使って社内ネットワークに侵入されたとされています。


0.25%への追加利上げ検討 国債購入減額の計画決定へ

日銀は31日の金融政策決定会合で、追加の利上げを検討していることが30日に明らかになった。短期金利を「0~0.1%程度」から「0.25%程度」に引き上げる案が主に議論されている。賃上げの動きが中小企業や地方にも広がっており、日銀は物価上昇率が目標の2%程度で推移するとの見通しを強めている。そのため、3月のマイナス金利政策の解除に続き、追加の利上げを検討している。

同会合では、国債買い入れの減額計画も決定する。現在月間6兆円程度の購入額を、2025年度末までに3兆円程度に減らす案が有力である。

物価の高騰により個人消費は鈍っているが、日銀は賃金の上昇や政府の定額減税の効果で景気の後退は避けられると見ている。しかし、最近の円安が急激で輸入インフレが再び問題となる可能性があり、日銀内では利上げが適切との意見が多い。ただし、実質賃金がプラスに転じるまで待つべきだという意見もあるため、最終的な調整を会合で行う。

もし日銀が追加の利上げを行えば、変動型住宅ローンや企業の借り入れの金利が上がり、消費や設備投資に悪影響を及ぼす可能性がある。追加利上げの経済への影響も検証される。

また、会合では最新の景気予測「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめる。日銀は26年度の後半までの見通し期間で、基調的な物価上昇率が目標の2%程度で推移するシナリオを維持する見込みである。


うなぎ商戦、猛暑で熱気 物価高対抗で「低価格」も

「土用の丑の日」が近づくにつれ、百貨店やスーパー、外食チェーンではうなぎの販売競争が激化している。豪華な商品から、物価上昇に苦しむ消費者向けの中・低価格帯商品まで、幅広い選択肢が提供されている。猛暑を利用して、「うなぎを食べて夏を乗り切ろう」という業界の声が高まっている。

大丸東京店は、過去最多の約70種類のメニューを揃えている。伝統ある「伊勢定」の「鰻弁当(大)」(4590円)や、うなぎと米沢牛が楽しめる「丑×牛でスタミナを」(5400円、事前予約制で期間・数量限定)など高級品も揃えている一方で、1000円前後の手頃な商品も豊富だ。広報担当者は「物価の高騰の中でも、多くの人に季節の風物詩を楽しんでもらいたい」と述べている。

イトーヨーカドーとヨークは、中国産うなぎを使った「うなぎまぶしご飯」を429円で販売し、大人気となった。鹿児島県産のうなぎは仕入れ方法を見直し、「うなぎの蒲焼 大」を昨年より200円安い2570円で提供し、価格に敏感な消費者の支持を得ている。

イオンリテールは、10代から20代をターゲットにした「Z世代」向けに、焼き鳥のように食べる串刺しの「中国産うなぎ おつまみ串蒲焼」(4本入り861円)を新たに販売している。広報担当者は、「魚食文化を若い世代に繋げるため、彼らに響く商品を企画した」と意気込んでいる。

外食チェーンもこの熱気に乗じている。すかいらーくホールディングスが運営する「ガスト」は、初めて「うな重」をメニューに加え、1390円から1990円で提供しており、好評を博している。

ロイヤルホールディングスの「天丼てんや」は、うなぎのかば焼きの天ぷらととろろを使った「うなとろ天丼」(1080円)の販売期間を22日から8月7日までと昨年の倍に増やし、イベント需要を取り込む戦略を展開している。


柏崎原発で県民説明会 国が再稼働へ理解要請

新潟県は15日、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働について、国から県民が直接説明を受ける会合を長岡市で開きました。経済産業省の担当者は「経済を支えるエネルギー供給に問題があってはならない」と述べ、安全確保を前提に原発の活用に理解を求めました。

説明会は経産省の要請を受けて開かれ、オンラインを含め約120人の県民が参加しました。内閣府の担当者は、豪雪などの自然災害と原発事故が同時に起こる「複合災害」時の対応について説明しました。

県民からは「事故時に東電のために家や財産を置いて逃げなければならないのか」といった声が上がり、経産省側は「安全性向上に向けた取り組みをしっかり指導していきたい」と述べました。しかし、県が求めている災害時の避難道路整備についての具体的な議論はありませんでした。


コメ兵、海外展開加速 「循環経済」で売り上げ3倍に

中古ブランド品大手のコメ兵ホールディングス(HD)が海外展開を加速している。廃棄物を最小化する「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への関心の高まりを背景に、現状100億円強の海外売上高を4年後に約3倍、将来的には1500億円に拡大し、「ブランドリユース売上高世界ナンバーワン」を目指している。

 戦後衣類の行商からスタートした同社。高級ブランドの中古品を中心に、2024年3月期の国内ブランド品売上高は1143億円と過去最高を更新。海外では18年9月の中国出店後、台湾やタイ、シンガポールなど5カ国・地域に21店舗を展開。今年4月には香港にアジア統括会社を設立した。

 「グローバル展開を真剣に考えているのはうちくらい」。竹尾英郎海外事業部長(46)は事業拡大余地に自信を見せる。海外では特定分野のみの小規模店が多いが、同社は多くのブランドの多様な品目を取り扱う。「一つのカテゴリーでは負けるが、トータルだと勝てる」と指摘する。

 データの蓄積も強み。急増するインバウンド(訪日客)を含めた豊富な売買データに基づき、売れやすい商品を買い取ることが可能で、「ヤマ勘でやっている店とは違う」と強調する。

 国連の持続可能な開発目標(SDGs)の考え方が浸透し、若者を中心に中古品のイメージはポジティブに変化。特に海外では中古品を「プレラブド(前に愛されたもの)」と呼び、あえて中古品を選ぶなど「購買行動の変化」も見られるという。竹尾氏はアジアに加え北米や欧州への展開にも意欲を示す。


新紙幣の発行開始 20年ぶり、肖像に渋沢ら3人

日本銀行は3日、20年ぶりに新しい紙幣の発行を開始した。新紙幣の肖像には、1万円札に「近代日本資本主義の父」とされる渋沢栄一、5千円札には女子英学塾(現津田塾大学)の創立者津田梅子、千円札には「近代日本医学の父」と称される北里柴三郎が選ばれた。キャッシュレス化が進む中、新紙幣の登場は初めての事例である。

日本銀行は3日、東京・日本橋本石町の本店および全国32支店で、通常より1時間早い午前8時から金融機関専用窓口を開設し、金融機関への新紙幣の払い出しを開始した。準備が整った金融機関の窓口やATMでは、順次新紙幣を入手可能となる。

新紙幣は国立印刷局で製造され、傾けると肖像が立体的に動く3次元ホログラムなど、世界で初めての偽造防止技術が採用されている。日本銀行は6月末時点で、1万円札約29億枚、5千円札約3億枚、千円札約20億枚を備蓄している。

以前に発行された福沢諭吉の1万円札、樋口一葉の5千円札、野口英世の千円札は引き続き使用可能である。財務省と日本銀行は、「従来の日本銀行券が使えなくなるという詐欺に注意するよう」呼びかけている。


道半ばの「指定価格」家電 値崩れに歯止め、客離れ懸念も

家電メーカーが販売価格を指定し、在庫の返品に応じる「指定価格制度」が導入されて約4年が経過した。この制度を先行して導入したパナソニックは、値下げ競争に巻き込まれることなく、利益向上の効果を実感している。しかし、消費者の節約志向が強まる中で、顧客離れの懸念は依然として強く、他のメーカーの追随は限られている。

パナソニックは2020年度に炊飯器などを対象に指定価格制度を開始し、その後ドライヤーなどにも拡大。2022年度と2023年度の2年間で約100億円の利益向上効果があったとされる。品田正弘社長は「価値ある商品を値崩れさせずに販売することは、流通業界や消費者からも支持されている」と述べている。

家電製品は発売後一定期間が経過すると値下げされる傾向にあり、メーカーは新製品を頻繁に市場に投入することで競争に追われていた。パナソニックはこの悪循環を断ち切り、「良質な製品を長期間使用し、顧客満足度を高める」という目的を持っている。

パナソニックに続いて、日立製作所の家電子会社や掃除ロボット「ルンバ」のアイロボットジャパン(東京)も同じ制度を採用している。家電量販店からは「値引きではなく、商品の価値を丁寧に説明し理解してもらう」という前向きな意見が聞かれる。

一方で、ある大手電機メーカーは「指定価格の商品が割高に感じられる可能性がある」として顧客離れを心配している。別のメーカーの幹部は「市場シェアが低い製品にこの制度を適用すると、顧客の関心を失う恐れがある」と述べ、慎重な姿勢を崩していない。

ノジマ亀有店(東京都葛飾区)では、「安心・信頼の指定価格」と記された値札が目立つ。店を訪れた50代の女性は「価格に納得すれば、値引きがなくても購入する」と話している。しかし、30代の女性は「値引きがなければ、似た製品の中から他を選ぶ」と述べている。


林デンソー社長:リコール問題陳謝 認証不正はない

デンソーの林新之助社長は20日、愛知県刈谷市の本社で開いた定時株主総会で、自動車向け燃料ポンプのリコール(回収・無償修理)問題について「カーユーザー、カーメーカー、株主の皆さまにご心配、ご迷惑をおかけしていることを心よりおわび申し上げる」と陳謝した。その上で「信頼と信用を取り戻すべく、品質第一の原点に立ち返り、全社一丸で取り組む」と強調した。

 株主からは「複数の自動車メーカーの認証不正のニュースを聞き、デンソーでも同様の不正がないか心配している」との質問が出た。デンソー側は「昨年の時点で全社で再点検を行い、法規に適合していることは確認済みだ」と答えた。リコール関連費用の引き当てについて、松井靖副社長は、今後追加の引き当てが必要になることはないとの見方を示した。


半導体量産へ法整備検討 ラピダス支援念頭―骨太原案

政府は11日に発表した「骨太の方針」の原案で、次世代半導体の量産に向けた法整備を検討する方針を明らかにした。国産半導体の復興を目指すラピダス(東京)への支援を念頭に置き、財政規律を考慮しつつ、補助金以外の手法で民間投資を促進する新しい仕組みを検討中である。これは、経済安全保障上ますます重要になる半導体の量産化を支援するための方針である。

政府は原案に「次世代半導体の量産に必要な法制上の措置を検討する」と記載した。ラピダスへの民間融資に政府保証を提供する案が有力であり、法改正の必要性を検討した後、年末までに具体策を急ぐ予定だ。

経済産業省は、2022年のラピダス設立以降、研究開発支援として2022年から2024年度にかけて最大9200億円の国費を投じている。同社は現在、北海道千歳市で2ナノメートルの回路線幅を持つ次世代半導体工場の建設を進めており、2027年の量産開始を目指している。

しかし、量産化には民間資金の確保が大きな課題である。量産には総額5兆円の資金が必要とされているが、現在のところトヨタ自動車やNTTなどからの出資は合計73億円に留まっており、目標には遠く及ばない。

財政規律に関しても厳しい目が向けられている。財政制度等審議会の4月の会合では、日本政府による半導体産業への支援額が過去3年間で約3.9兆円に上ると指摘され、「欧米諸国と比較しても突出している」との意見が出された。出席委員からは「補助金に頼らない支援方法を工夫するべき」との声も上がっている。政府は財政を考慮しつつ、支援を積極化する難しい舵取りを迫られている。


30年後に花粉発生量半減 伐採・植え替え加速

政府は4日、2023年度の森林・林業白書を閣議決定した。花粉症を初めて特集し、原因であるスギの人工林の伐採や花粉の少ない苗木への植え替えを加速させると明記。花粉の発生源となるスギ人工林の面積を10年後に2割程度減らし、30年後に花粉の発生量を半減させる目標を打ち出した。

 白書では戦後に造られた人工林が利用期を迎えているとし、木材需要の拡大などに「消費者を含めた社会全体で取り組む必要がある」と訴えた。


基本理念に「食料安保」を明記 自給率、低迷長期化―改正農基法

改正食料・農業・農村基本法(農基法)が29日、成立した。見直しの柱は食料安全保障の強化だ。食料の生産や流通が不安定になることへの懸念が高まる中、基本理念に「食料安全保障」の文言を盛り込んだ。政府は今後、施策の具体化を進めるが、食料自給率は長らく低迷しており、実現は容易ではなさそうだ。

 国民の食生活の変化に伴って食料自給率(カロリーベース)は低調に推移し続け、2022年度は38%にとどまった。世界では人口増加に伴って食料需要が拡大しているほか、異常気象の頻発で毎年のように不作に陥る地域や作物もある。またロシアによるウクライナ侵攻を背景に、小麦の価格が急騰するなど、食料の多くを輸入に頼る日本の現状には不安がつきまとう。

 今回の改正では、農基法に基づき5年ごとに策定する基本計画で掲げる目標について、食料自給率のほか、新たに「食料安保に関する事項」を加えた。今国会では、特定の食料が供給困難になった場合、状況に応じて増産の要請や計画作成の指示などができる仕組みを盛り込んだ関連法案も審議中だ。

 岸田文雄首相は「輸入に依存する農産物の国内生産の拡大が急務だ」と強調するが、自給率は10年度以降、40%を割り込み続けており、構造転換は容易ではない。第一生命経済研究所の高宮咲妃副主任研究員は「食生活を急に変えることは難しく、国内産地を応援するなどの機運を高めることが必要だ」と指摘している。


過度な変動に介入「許される」 為替、米と緊密に意思疎通―神田財務官

財務省の神田真人財務官は24日夕(日本時間25日未明)、投機などによる為替相場の過度な変動に対しては、政府による円買い・ドル売り介入を含む適切な措置が「許されている」との考えを示した。先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に出席するため出張中のイタリアで、記者団の取材に応じた。

 政府・日銀は急激な円安進行に対し、4月下旬から5月初めにかけて計2回の為替介入を実施したとみられる。

 神田氏は、米国のイエレン財務長官が為替介入に関し「日常的に使われる措置ではない」などと発言したことに関し、「まれであることが望ましいことは言うまでもない」と指摘。米国と為替や金融市場動向に関し「極めて緊密な意思疎通を続けてきたし、今後も続けていく」と語った。その上で「必要に応じて、いつ何時でも適切な措置を取っていく」と強調した。


新幹線荷物輸送が拡大 北海道から鹿児島まで―JR各社

新幹線による荷物輸送が拡大している。JR各社は定時運行率の高さなどを売りに、車両の空きスペースを活用して生鮮食品などを産地から消費地へ運ぶ。輸送経路は北海道から鹿児島県までつながった。トラック運転手への時間外労働規制で輸送停滞が懸念される「物流の2024年問題」に対応するため、各社は新幹線の荷物輸送を強化する方針だ。

 JR東日本は21年にサービスを始めた。新幹線のスピードや本数の多さを生かして即日輸送ができるため、食品のほか精密機器、医療用の検体など顧客の幅広い需要に対応でき、1日約40本を活用する。JR東海は今年4月、東海道新幹線「こだま」の業務用室に荷物を積み込むサービスを開始。JR九州は自動車輸送と組み合わせた集荷配送なども手掛けている。

 17日には輸送ルート拡大を記念し、新幹線で運んだJR6社管内の名産品などを東京駅構内で販売するイベントが開かれ、弁当や菓子を買い求める人でにぎわった。会社員男性(42)は、新幹線「はやぶさ」で北海道から届いたばかりの「函館みかどのいかめし」を購入し、「東京に居ながら北海道の出来たての商品を食べられるのは良い」と喜んでいた。


自治体の産業用地整備を支援 今年度、数十団体選定へ―企業の「国内回帰」に対応・経産省

経済産業省は、産業用地の整備を目指す都道府県や市町村への支援強化に乗り出す方針を固めた。製造業を中心に企業の間で生産拠点を海外から国内に戻す「国内回帰」が進んでいるため。職員の育成や用地確保の助言といった専門機関のサポートを受けるための費用について、自治体負担を半額程度に軽減することを検討。2024年度中に数十の自治体を選定し、支援を始める方向で調整する。

 工場誘致は地方経済の活性化につながり、地域の中小企業など関連産業への波及効果も期待されており、14日に開催予定の産業構造審議会(経産相の諮問機関)の会合で表明する。

 経産省では、産業用地に適した立地や企業のニーズなどを調査する自治体に対し、専門機関が伴走支援したり、土地開発の法令に関する職員向け研修を開いたりすることを想定。中小企業基盤整備機構の助成金を原資とする約11億円の基金を活用することで、自治体の費用負担を半分程度に抑える方針だ。28年度まで継続する計画で、24年度は6月ごろの公募開始を目指す。

 円安の影響でアジア諸国などで生産する利点が薄れたことに加え、米中対立などの地政学リスクが高まり、海外に生産拠点を移してきた製造業の一部で国内回帰を図る動きが加速している。ただ、経産省が23年度、都道府県と政令市に対して実施した調査では、企業が求める産業用地を確保できたと回答した自治体が1割程度にとどまった。

 ある県の担当者は「専門知識を備えた職員が不足している」と指摘。産業用地に適した土地や開発資金の確保が難しい自治体も多く、経産省は支援を通じて自治体側の「供給力」向上を目指す。


14自治体が規制区域指定 危険な盛り土対策、法施行1年

静岡県熱海市の土石流災害を踏まえ、盛り土の安全対策を強化した「盛土規制法」が施行されて今月26日で1年となる。国土交通省のまとめでは、4月1日までに福島、大阪、広島、鳥取の4府県や神戸市など計14自治体が同法に基づく規制区域を指定。危険な盛り土の早期発見に向け、住民に情報提供を求めるなど監視を強化している。

 同法は、盛り土の崩落で被害の恐れがあるエリアを全国一律で規制。都道府県知事などが指定した区域では、新たな盛り土をする場合、許可が必要となる。

 土砂災害が繰り返し起きている広島県は昨年9月、全国で最初に区域を指定した。山間部などでの規制は条例で厳格化。国の基準では盛り土の許可が必要な面積は3000平方メートル以上だが、500平方メートル以上にした。

 住民には、広報紙や回覧板などで不審な盛り土の通報を呼び掛けている。県の担当者は「職員だけでは手が足りない。県民による監視の目を厳しくすることが重要だ」と話す。

 静岡県は来年5月までに、区域指定を終える計画だ。同県は2021年の熱海市の土石流災害が発生する前から、条例で盛り土規制を強化しており、土石流の起点にあった盛り土も届け出を受けていた。

 しかし、盛り土の高さは事業者の届け出では15メートルだったのに、実際は50メートルに達していた。そこで県は、人工衛星の画像を活用した監視システムなどを導入。担当者は「制度と監視の両面から悪質行為の防止に取り組む」と強調する。

 国交省によると、来年5月までに約9割の自治体で指定が完了する見込み。ただ、ノウハウ不足で作業が遅れ、指定時期が未定の自治体もある。ある県の担当者は、地形調査が完了し次第、市町村との協議に入るとした上で、「規制をかけると経済活動が制限されるので、協議は難航するのではないか」と指摘。早期指定に向け、国に先行事例の提供など、支援の充実を求めた。


EV、3割値下げも 価格競争が激化―中国

中国で国内外の自動車メーカーが激しい価格競争を繰り広げている。開催中の北京国際モーターショーでも、自社製品の手頃さをこぞってアピール。中国メディアによると、値引きの対象は主に電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)といった新エネルギー車(NEV)で、今年に入り3割下がった車種もある。

 「当面、特別価格で販売する」。ホンダはショーに合わせて発売するEVについてこう説明した。同社によると、発売直後から値下げに踏み切るのは異例。業界関係者は「シェアを維持するための苦渋の選択だろう」と分析する。

 中国では、EV最大手の比亜迪(BYD)が2月に主力車種を値下げしたことをきっかけに価格競争が激化。3月末には家電大手の小米科技(シャオミ)がコストパフォーマンスの高さをうたった同社初のEVを発売し、理想汽車や米テスラも値下げで対抗した。

 BYDは今回のショーで公表した新型PHVを12万元(約260万円)で販売すると発表。ブースにいたインフルエンサーの女性は「価格は重要な要素だ」と断言した。

 中国メディアによると、中国では100を超える企業がNEV事業に参入。国家発展改革委員会は各社の供給台数が需要を上回っているとして、値下げがさらに進むとの見方を示した。先の業界関係者は、一部のメーカーを除き利益が出ていないと指摘。「多くの企業は将来、市場からの撤退を強いられるだろう」と予想した。


スパコン整備に巨額支援 AI開発加速のカギ―経産省

経済産業省は、人工知能(AI)開発に必要なスーパーコンピューターを整備するKDDIなどの計画を後押しする。支援額は最大で計725億円と巨額に上る。文章や画像を自動で作る生成AIの開発には、膨大なデータの学習や計算が可能なスパコンなどの計算基盤の整備がカギを握る。官民一体で開発体制を整え、先行する海外勢に対し巻き返しを狙う。

 「経済安全保障や産業競争力強化の観点から、生成AI開発用の計算資源を国内に整備することが重要だ」。斎藤健経産相は19日の閣議後記者会見で支援の狙いをこう強調した。生成AIの開発では、大規模な計算基盤を持つ米IT企業が優位に立つ。日本では計算基盤が乏しく、米マイクロソフトなど海外企業が提供するクラウドサービスに依存しているのが現状だ。

 今回の支援では、膨大なデータを処理できる米半導体大手エヌビディアの画像処理半導体(GPU)の調達費用などを補助し、GPUを組み込んだAI開発向けのスパコンを各社が整備する。生成AIを開発するスタートアップ(新興企業)などにスパコンを利用させることを要件に、大企業に最大3分の1、それ以外の企業に同2分の1をそれぞれ補助する。

 経産省は、生成AI開発に必要な国内の計算能力を2027年度末に現在の20~30倍の60エクサ(エクサは100京)フロップス(処理速度を表す単位)へ拡大する目標を掲げる。今回の支援を通じても、約30エクサフロップスと目標の半分にとどまっており、同省はさらなる支援でAI開発基盤の整備を加速させる。


円安けん制強まらず 新たな「防衛ライン」試す市場

歴史的な円安進行に、政府は口先介入を繰り返している。ただ、「防衛ライン」とみられていた1ドル=152円を突破しても、政府・日銀には為替介入はおろか、けん制発言のトーンを強める様子もない。市場が政府の本気度を試すため、新たな「防衛ライン」を探る展開が続きそうだ。

 鈴木俊一財務相は12日午前の閣議後記者会見で、為替相場の過度な変動には「あらゆる手段を排除することなしに、適切に対応を取っていきたい」と強調した。この表現は4月以降ほぼ変わっておらず、けん制効果がなくなりつつある。

 市場は、直近で政府・日銀が円買い介入を実施した2022年の要人発言と比較しながら、「実力行使」への距離を測ってきた。円安の進行とともにけん制発言の言い回しが徐々に強まっていく傾向にあったためだ。

 22年9月に円が急落した局面では、財務省の神田真人財務官が「(介入は)スタンバイの状態にある」と発言。その日のうちに約24年ぶりの円買い介入に踏み切った。同10月には鈴木氏が「断固たる対応」「過度な変動は容認できない」と強い警戒感を示した後、覆面介入を2回行った。

 鈴木氏は今年3月27日、「断固たる措置」という言葉でけん制。警告の度合いを高めるとみられたが、その後は円安が進んでも「適切に対応」という後退した表現を繰り返している。

 円安は輸入価格の上昇を招き、「企業や消費者の負担増になるマイナスの影響も生じる」(鈴木氏)ため、政府として行き過ぎた円安水準は無視できない。ある財務省幹部は「(円安の)水準が高いのは気持ちが悪い」と話す。

 財務官経験者の一人は、「投機的な動きと判断される場合には、アクションが取られることになると思う」と指摘。介入は引き続き、いつあってもおかしくないとの見方を示す。市場の警戒感がくすぶり続ける中、次のラインを巡る神経戦は激しさを増している。


髪のお手入れ、広がる高価品 美容意識高まり、メーカー競争激化

シャンプーやトリートメントなどのヘアケア商品で高価格帯への移行が進んでいる。性別を問わず幅広い世代で美容意識が高まっていることなどを背景に、付加価値の高い1400円以上(470ミリリットル前後)の商品が人気だ。商機に乗り遅れまいと、大手メーカーも参戦し、競争が激化しつつある。

 民間調査会社インテージなどによると、1400円以上の「ハイプレミアム市場」の2023年売上額は1241億円とヘアケア市場全体の4割を占めた。17年の417億円から約3倍に成長した。

 高価格帯化への火付け役となったのが、化粧品や美容家電の企画・開発などを手掛けるI―ne(アイエヌイー)。同社が15年に発売した「ボタニスト」シリーズは1500円以上だが、泡立ちなど使用感の良さが受けて急速にシェアを拡大した。睡眠中の髪ダメージを軽減する「ヨル」シリーズもヒット。同社は「ボタニスト以降、1000円以上のシャンプーに参入するブランドが増えた」(広報)と指摘する。

 高価格帯に押され、800円未満の商品は縮小傾向だ。インテージによると、17年に1463億円だった売上額は23年には1058億円と3割減少。こうした状況に大手は危機感を強める。

 花王は、ヘアケア市場全体でトップシェアを誇るが、ハイプレミアム市場では出遅れた。3月に生炭酸シャンプーなどを1700円以上で展開するブランド「メルト」を新設。今秋から来年にかけ、第2、第3の新ブランドを投入する。内山智子ヘアケア第一事業部長は「ターゲットを絞り、短期間でブランドを開発、拡張していく」と巻き返しを狙う。

 クラシエ(東京)は昨年3月、1400円以上のブランド「ココンシュペール」をリニューアルした。大手が高価格帯市場の開拓に本腰を入れることで、品ぞろえが拡充されそうだ。


商業捕鯨、自立へ視界不良 新母船が竣工―山口・下関

共同船舶の新たな捕鯨母船「関鯨丸」が竣工(しゅんこう)し、29日に山口県下関市で式典が開かれた。日本が国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、2019年に領海と排他的経済水域(EEZ)商業捕鯨を再開してから今年7月で5年を迎えるが、国内の鯨肉消費は低迷したまま。水産庁は、捕獲可能な種類を追加する方針だが、採算性が前提となる商業捕鯨の自立に向けては、依然として視界不良だ。

 鯨肉の国内消費は1962年度の約23万トンをピークに年々減少。88年に商業捕鯨をいったん中断する前年に1万トンを割り込み、再開後も約2000トンで推移している。政府は捕鯨対策に年間51億円を予算計上し、科学調査のほか、鯨肉の普及促進支援などを実施しているが、消費拡大は見通せない。

 共同船舶の所英樹社長は、竣工式の記者会見で「最終的には5500トンの市場を目指す。数年かければそこまでいける」と力を込めた。同社は22年度、商業捕鯨を再開してから初めて黒字化に成功。ただ、今後は関鯨丸の建造費約75億円の減価償却が重荷となる。

 北海道網走市、宮城県石巻市、千葉県南房総市、和歌山県太地町をそれぞれ拠点に近海で捕鯨を行う4団体も、経営改善に至っていないという。捕獲対象のミンククジラが不漁に見舞われ、苦境が続く。

 水産庁は、ミンククジラなど3種類の大型鯨類について、資源保護と持続可能な利用の両立のために漁獲可能量(TAC)を設定。このうちニタリクジラとイワシクジラは上限まで捕獲されており、年内に審議会で4種類目のTACを新設する。同庁捕鯨室は「事業者の選択肢を増やし、経営の自由度を高めたい」と説明している。


トヨタグループ、信頼回復急ぐ 企業風土に課題

 トヨタ自動車はグループの日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機などで不正が相次ぐ中、信頼回復に向けて立て直しを急ぐ。一連の不正に共通する背景として、トヨタに物を言いづらい企業風土などが指摘されており、染み付いた意識を変えるには時間がかかりそうだ。

 トヨタは今春闘の労使協議の場で、生産現場の負担を軽減するため、生産性向上に関する数値目標を1年間凍結する方針を打ち出した。トヨタ本体でも現場が抱える課題を洗い出し、目標の適正化につなげる。

 生産現場にゆとりを持たせて品質確保につなげるため、2024年度の国内生産の目安を1日当たり1万4000台程度と、従来の1万5000台近い水準から落とす。新型車の開発計画も見直しを進めており、業績よりも「足場固め」を優先させる。

 トヨタの豊田章男会長は今年1月、相次ぐ不正を謝罪した上で、「私自身が責任者としてグループの変革をリードする」と宣言。日野、ダイハツ、豊田織機の3社に認証業務の改善に取り組むチームを設けるなど、信頼回復に向けた取り組みを加速させる方針だ。


早期に浮体式の導入目標を 秋元博路・アルバトロス・テクノロジーCEO―洋上風力発電・インタビュー

―EEZへの期待は。

 日本は領海内でも着床式風力を設置できる場所が少なく事業拡大余地があまりない。もう浮体式風力に軸足を移すべきだ。EEZは領海の約10倍の面積がある。大部分は浮体式にも水深が深過ぎ、実際に導入できるのは領海の2、3倍だが、それでも浮体式市場で世界トップレベルになれる。

 ―改正法案の評価は。

 領海外のEEZには財産権の問題があったが、法改正で(国による許可制度が整備され、権利保護の)筋道はできる。ただ、国に浮体式の導入目標がなく、風力事業者にも漁業者にも事業予見性がない。早く目標を出さないと海外から投資を呼び込めない。スタートアップも資金調達に困る。

 ―コストが課題だ。

 将来的には着床式よりコストを下げられる。陸から遠ければ風速が強く、変動も小さいので発電量が増える。われわれが開発しているのは浮体も風車と一緒に回転する形。軽くて重心が低く、傾いても良いので浮体を小さくできる。羽は炭素繊維を使った部材を貼り合わせる構造で、設置に大型作業船を必要としない。従来の浮体式より初期投資と保守費を半減できる。

 ―有望視する海域は。

 一番有望なのは東海エリアだ。愛知県や静岡県の周辺、東京都も一部入る。沖合なら夏場でもあまり風速が落ちないし、需要地にも近い。

 ―事業計画は。

 電源開発と東京電力ホールディングス、中部電力、川崎汽船と昨年、共同研究契約を結び、日本政策投資銀行から出資を受けた。出力20キロワット級の実証実験を来年初めには開始したい。商用機は15メガワット級を目指している。