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がん組織だけ免疫活性化=マウスで開発、創薬目指す―大阪大

大阪大微生物病研究所の山本雅裕教授らは、がん組織で免疫を抑制している「制御性T細胞」の一種を減らし、免疫を活性化してがんを抑制する方法をマウスで開発し、米科学誌サイエンスに22日付で発表した。山本教授は「自己免疫疾患を引き起こさない新しい免疫療法の可能性があり、創薬に取り組む」と述べている。

 

通常、体内に侵入した有害な微生物やがんは免疫によって排除されるが、免疫が過剰になると自己の組織を攻撃し自己免疫疾患を引き起こすことがある。そのため、免疫細胞は通常、アクセルとブレーキのバランスを保ちながら機能する。しかし、がん組織ではブレーキが強まり、がんの増殖を許してしまう。山本教授らは、マウスのがん組織でブレーキ側の「Th1-Treg」という制御性T細胞が「PF4」という物質によって増加することを発見し、PF4を中和する抗体を投与することで、Th1-Tregを減少させ、免疫細胞を活性化してがんの増殖を抑制できることを見出した。

 

ヒトのがん患者においてもPF4の量が多いと生存率が低いことが知られており、山本教授は「ヒト用のPF4中和抗体を発見しており、製薬会社と協力して臨床試験を進めたい」と述べている。制御性T細胞には多くの種類があり、全てを除去すると自己免疫疾患が発生するが、Th1-Tregのみを除去することでそのリスクを回避できるという。


タンパク質、適量の把握を
~効率的に摂取するには(神奈川県立保健福祉大学大学院 鈴木志保子研究科長)~

タンパク質は、炭水化物、脂質と共に三大栄養素の一つ。食事から取るのが基本だが、1日に必要な量は性や年齢、体格や活動量などで個人差があるため、自分の適量を知ることが大切だ。神奈川県立保健福祉大学大学院(神奈川県横須賀市)保健福祉学研究科の鈴木志保子研究科長に、適切なタンパク質摂取の方法などについて聞いた。

食品に含まれるタンパク質の量

食品に含まれるタンパク質の量

 ◇過剰摂取はリスクも

 一般的な生活をしている人の1日に必要な摂取量の目安は、体重1キロ当たり1グラムで計算できる。体重60キロの人では1日60グラムのタンパク質が基本だ。活動量が多ければその1.1~1.2倍、スポーツ選手なら1.2~1.7倍が必要。

 ただし、「大量に取っても余分なタンパク質は体内で使うことができず、分解して一部は脂肪に、一部は体外へ排出される。過剰摂取を続けると、肝機能や腎機能の低下につながることもあります」。

 自分の適量が分かったら、必要な量を3回の食事で均等に分けて取るのが理想的だ。タンパク質は、肉や魚、卵、乳製品などの動物性タンパク質、豆製品など植物性タンパク質の他、ご飯やパン、うどんなどの主食にも含まれる。主食のタンパク質は動物・植物性タンパク質の質に比べてあまり良くないが、「動物・植物性タンパク質を含む食品と一緒に食べれば、栄養素のバランスが整います」。

 ◇不足分は間食で調整

 働き方が多様化する現代では、1日3回食べることが難しい人も少なくない。「大事なのは1日に食べる総量とタイミング。3食にこだわらず、自分の生活スタイルに合った間食を取りましょう」

 例えば、昼食と夕食の時間が空く場合は、夕方におにぎりやパンなどを取るとよい。「糖質も体に必要な栄養素。間食で集中力が上がるだけでなく、夕食のドカ食いを防げます。夕食の主食を減らせば、エネルギーの過剰摂取を防ぐこともできます」

 朝食を取る時間がなければ、朝10時ごろに牛乳を飲んだり、ヨーグルトを食べたりして補う方法もある。

 間食は、1日に必要なエネルギーや栄養素の量を把握し、食べる総量を変えない点が重要だ。鈴木研究科長は「食事や総量、間食で何をどれだけ食べればよいかは、自分では判断しにくいです。気になることは管理栄養士や栄養士に気軽に相談を」と話す。


大腸の右側に異物排除の働き=小腸と似た機能、遺伝子解析結果―がん新治療法期待・国立センターと阪大

大腸がんは、左側の肛門近く(下流)に発生するケースが80%を占めており、右側の小腸近く(上流)で発生するケースが少ないのは、右側には免疫を担う小腸と同様にがん細胞や異物を排除する強い機能があるためと考えられている。この発見は、国立がん研究センターと大阪大学の研究チームによって8日に発表された。

 

胎児期の消化器は前腸、中腸、後腸に分けられ、中腸からは小腸と右側の大腸が、後腸からは左側の大腸が形成される。この違いは成長後も継承され、遺伝子解析で確認されている。小腸は栄養吸収の役割が主だが、免疫機能も強く、異物排除に貢献しているため、小腸がんは非常に稀である。大阪大学の谷内田真一教授は、小腸の免疫システムを活性化させることでがんの予防や治療につながる新しい治療法の開発が期待されると述べている。

 

国立がん研究センター中央病院の斎藤豊内視鏡科長らは、大腸の内視鏡検査で異常が見られなかった健康な人々と大腸がん患者を対象に、大腸の様々な部位と小腸の最下流部である回腸末端の組織サンプルを採取し、遺伝子の活動を包括的に解析し比較した。その結果、大腸の左側では水分吸収に関わる遺伝子が活発に働くのに対し、右側では異物排除に関わる遺伝子が活発に働いていることが明らかになった。また、大腸がん患者では、外見上正常に見える部位でも遺伝子の活動が健康な人々と異なり、未病状態であると推測された。

 

さらに、回腸末端では免疫機能を担うT細胞を活性化する遺伝子が働いているが、大腸がんが進行するとこれらの遺伝子の活動が異常になることが判明した。谷内田教授は、日本において大腸がんが最も多いがんであるため、未病状態を健康に戻す先制医療の重要性を強調している。この研究は、国際的ながん専門誌「モレキュラー・キャンサー」に掲載された。


ワクチンで予防可能
~加齢とともに増える帯状疱疹(奈良県立医科大学付属病院 浅田秀夫教授)~

顔や胸、脇腹などに痛みを伴う小さな水膨れがまとまって表れる帯状疱疹(ほうしん)。加齢とともに発症しやすく、神経痛などが残るリスクも高まる。水ぼうそうにかかったことがあれば患う可能性があるが、8年前からワクチンが導入され、予防が可能になった。奈良県立医科大学付属病院(奈良県橿原市)皮膚科の浅田秀夫教授に治療法やワクチンについて尋ねた。

2種類ある帯状疱疹ワクチン

2種類ある帯状疱疹ワクチン

 ◇80歳までに3人に1人

 国立感染症研究所の2022年度調査によると、成人の9割が水ぼうそうにかかったことがある。その原因である水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は治癒後も体内に潜伏。加齢、疲労、ストレスなどによる免疫の低下で再び活動を始め、帯状疱疹を引き起こす。

 ウイルスは神経を伝って皮膚に移動するため、ちくちくした痛みから始まる。その後、少し膨らみ水疱(すいほう)のある発疹が表れ、胸や腹、背中、顔など全身どこにでも発生する。患者は50代から増え始め、80歳までに3人に1人が発症する。

 症状が出てから早めに抗ウイルス薬で治療すれば、3週間ほどで痛みや皮膚病変は治まる。ただし、痛みが夜も眠れないほど強いことや、数カ月以上残ることがある。「視力障害や難聴といった合併症のリスクもあることを考えれば、帯状疱疹の予防が重要です」

 ◇2種類が実用化

 予防のため、16年にVZVの生ワクチン、18年にはVZVのタンパクと免疫を誘導する補助成分を組み合わせた不活化ワクチンが承認された。これらは、対象者、接種回数、有効性、副反応、費用などが異なる。

 生ワクチンは原則50歳以上が対象で、皮下注射を1回、不活化は50歳以上または帯状疱疹のリスクが高い18歳以上の人に筋肉内注射を2回行う。効果が持続するのは不活化の方が長いとされる。接種後は「どちらのワクチンでも接種部位に赤み、痛みなどの局所反応がしばしば見られます。不活化ワクチンでは、約50%の人に筋肉痛や疲労、頭痛も起こります」。

 浅田教授によると、費用は生ワクチンが約1万円、不活化は2回で計約5万円が目安。任意接種のため全額自己負担だが、一部を助成する自治体も増えている。


リウマチと発熱

リウマチは関節の痛みや炎症を引き起こす自己免疫疾患として知られていますが、発熱もその一症状として表れることがあります。

 特に、50代女性がリウマチの症状に加えて熱が続いていると不安を感じるのは当然のことです。

 本記事では、リウマチと発熱の関係について詳しく解説し、リウマチ性多発筋痛症やリウマチの合併症による発熱についても触れます。

 風邪気味の症状とリウマチの関係を理解することで、安心して適切な治療を受けるための情報を提供します。

 ◇肩の痛みや微熱を引き起こす炎症性疾患

 リウマチ性多発筋痛症(Polymyalgia Rheumatica, PMR)は、肩や首、腰などの痛みやこわばり、微熱を引き起こす炎症性疾患です。

 この病気は自己免疫反応が原因であり、体の免疫系が誤って自身の組織を攻撃することによって発生します。PMRはリウマチの一種であり、高齢者に多く見られる疾患です。

 ◇50歳以上の女性に多く、70~80歳がピーク

 リウマチ性多発筋痛症は、特に50歳以上の女性に多く発症します。

リウマチ性多発筋痛症は50歳以上の女性に多く発症。微熱や疲労感、体重減少などの全身症状も見られることがある(イメージ)

リウマチ性多発筋痛症は50歳以上の女性に多く発症。微熱や疲労感、体重減少などの全身症状も見られることがある(イメージ)

 発症のピークは70〜80歳とされており、年齢とともに発症リスクが高まるものです。症状は突然始まり、主に肩や首、腰の痛みやこわばりとして表れます。

 これに加えて、微熱や疲労感、体重減少などの全身症状も見られることがあります。発症初期は風邪やインフルエンザと間違えられることが多いため、適切な診断と治療が必要です。

 症状が持続し、日常生活に支障を来す場合は、早期に医師の診察を受けることが重要です。

 ◇高齢者の発熱食欲不振、体重減少

 リウマチ性多発筋痛症は高齢者に多く見られるため、発熱食欲不振、体重減少などの症状も典型的です。

 これらの症状は、炎症が全身に広がることで引き起こされます。発熱はしばしば微熱程度ですが、持続的であるため、長期間続く場合は注意が必要です。

 また、食欲不振や体重減少は、全身の炎症反応と関連しており、身体全体の調子を崩す原因となります。高齢者にとっては、これらの症状が日常生活に大きな影響を及ぼすため、早期発見と適切な治療が重要です。