★政 治

知事不信任、民意は否定 パワハラ疑惑追及、先行き不透明―兵庫知事選

兵庫県知事選の投開票が17日に行われ、前知事の斎藤元彦氏(47)が再選されました。県民は新しい知事による県政の刷新ではなく、斎藤県政の継続を選択し、全議員の不信任を受けた議会の判断とは異なる結果となりました。斎藤氏は、パワハラ疑惑を追及する県議会と再び対峙することになりますが、選挙による県民の分断が大きな影響を及ぼし、混乱が続く可能性があります。

斎藤氏は以前の取材で、再選された場合は「大きな負託を新たに受けた」と述べ、告発文書問題による責任を「みそぎ」として捉えていました。再選後は、初期の改革をさらに強力に推進すると見られますが、選挙戦では根拠のない主張が飛び交い、街頭演説での小競り合いなど異常事態が発生しました。県内の分断と対立の修復が急務です。

一方で、県議会の調査特別委員会や第三者委員会による告発文書問題の追及はまだ終わっておらず、議論が近く再開される予定です。2023年のプロ野球優勝パレードへの協賛金集めでの金融機関への補助金増額疑惑も残っています。新たな事実が明らかになれば、県議会や県民の批判が高まり、斎藤氏の県政運営に影響が及ぶことは避けられません。

県議会はこれまで斎藤氏の資質に問題があると批判してきましたが、各会派は今後の対応に悩むでしょう。不信任決議案の再提出も選択肢の一つですが、新たな事実がなければ提出は困難との声もあります。

知事と議会の対立が再燃すると、25年度の予算編成はもちろん、少子化対策や防災対応などの個別施策にも影響が及び、県民が置き去りにされる状況が続く可能性があります。


石破首相、企業・団体献金の議論指示 立・維が禁止主張、規正法論点に

石破茂首相(自民党総裁)は12日、党政治改革本部の会合で企業・団体献金のあり方について党内で検討するよう指示した。立憲民主党や日本維新の会などは禁止に同調しており、政治資金規正法の再改正に向けた年内の与野党議論の中心となる可能性がある。

石破首相は、企業・団体献金に関する議論に期限を設けないとしつつ、「党の方針をまとめ、法改正が必要かもしれない」と述べた。

また、企業による献金は合憲であると指摘し、「公的助成の比重が増えることが適切か、深く考える必要がある」とも発言した。

首相は記者会見で、「個人献金の比重を増やすためには税制上の控除の見直しを検討し、上限を設定して監視を容易にする必要がある」との見解を示した。

自民党内では企業・団体献金の禁止に対する消極的な意見が多数を占め、若手議員は「資金力のある者だけが選挙に出られるようになる」との懸念を表明している。12日の会合では、献金禁止に賛成する声は挙がらなかった。

渡海紀三朗本部長は、「個人献金が正義で、企業・団体献金が悪であるという前提には議論が必要だ。企業・団体献金は透明性が高い」と記者団に述べた。

対照的に、立憲民主党の小川淳也幹事長は、臨時国会に向けて野党各党との連携を強調し、「大企業が自民党に莫大な資金を提供しているのは大きな歪みであり矛盾だ」と批判した。

維新や共産党も企業・団体献金の禁止を支持しており、石破政権が連携を模索する国民民主党は、与野党が合意すれば禁止に反対しない姿勢を示している。政治資金規正法の改正議論が進むにつれ、自民党の対応が注目される。


自民政調代行に新藤氏 経理局長は佐藤勉氏

自民党は11日、政策調査会長代行に旧茂木派の新藤義孝元経済再生担当相を任命する方針を決定した。経理局長には、菅義偉副総裁に近い佐藤勉元総務会長が就任する予定である。この決定は12日の総務会で正式に発表される。

国対委員長代理には丹羽秀樹元文部科学副大臣が、国対筆頭副委員長には村井英樹元官房副長官が就任する。政策調査会長代理には、旧民主党出身の細野豪志元環境相が選ばれた。財務委員長には山口俊一元衆議院議院運営委員長が、国際局長には土屋品子元復興相が任命されることになっている。


「石破外交」問われる手腕 日中、日米会談焦点

石破茂首相は、今月中旬に南米で開催される国際会議に出席し、「石破外交」を本格的に開始する予定です。衆議院選挙での大敗後、政権基盤が不安定な中、外交成果をアピールすることを目指しています。しかし、米国の保護主義的な姿勢が強まり、日中関係にも多くの課題が積み重なる中、首相の外交手腕が試されています。

「外交に休む暇はない」と首相は衆議院選挙の翌日、記者会見で南米の国際会議への出席意欲を示しました。首相の最後の外国訪問は10月のラオスでした。15日からペルーで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と、18日からブラジルで開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席します。

今回の海外訪問では、中国の習近平国家主席との会談を計画しており、東京電力福島第一原発の処理水放出問題について、日本の水産物の早期輸入再開を要請する方針です。また、中国広東省深セン市で発生した日本人男児の殺害事件についても事実解明を求めると見られます。習氏からの前向きな回答が得られるかが注目されています。

バイデン米大統領との会談も準備中で、首相は中国の東・南シナ海での覇権主義的な動きを踏まえ、日米同盟の強化を確認する意向です。岸田前首相の外交路線を引き継ぎ、同盟国との多層的な関係構築を目指しています。

5日の米大統領選後、首相は次期大統領との関係構築を急いでおり、来年1月の就任式までの対面会談を検討中です。外務省関係者は「早期の訪米を模索している」と述べています。

トランプ前大統領が再選された場合、日米間での通商や安全保障に関する摩擦が生じる可能性があり、首相は難しい舵取りを迫られるでしょう。

衆議院選挙で自民党と公明党が大敗したことで、首相は綱渡りの政権運営を余儀なくされています。外務省の幹部は「政権基盤がさらに不安定になれば、外交にも影響が出る」と懸念を表明しています。


「選挙結果を注視」 日中関係への影響見極め

林剣副報道局長は28日の記者会見で、衆議院選挙の結果に注目していると述べ、「日本の内政問題であるため、コメントは控える」としながらも、日中関係への影響を評価していると見られる。

中国のメディアは日本の報道を引用して衆議院選挙の結果を速報し、中国中央テレビは「石破茂首相が政権を維持できるかどうかが今後の焦点である」と報じ、「日本の政治状況は不確定要素に満ちている」と伝えた。

中国は石破氏の歴史問題に対する立場を評価し、首相就任以来、関係改善に積極的な姿勢を示している。今月9日には岩屋毅外相と王毅外相が電話で会談し、翌10日にはラオスで石破氏と李強首相が会談し、「新しい時代の要求に応じた建設的かつ安定した中日関係の構築」を呼びかけた。

選挙期間中の21日には王氏と秋葉剛男国家安全保障局長が電話で会談し、意思疎通を続けることで合意した。米大統領選を控え、「日本との関係を安定させたい」という意向があると外交関係者は見ている。


持続的賃上げ、中小対策カギ 価格転嫁が急務―経済好循環へ正念場―各党公約・賃上げ

円安による食料・エネルギー価格の高騰を背景に物価が上昇し、賃上げの動きが活発になっています。日本経済は、物価上昇を超える賃上げを実現し、個人消費を促進し、企業の収益と設備投資を増加させる経済の好循環を生み出せるかが試されています。27日の衆議院選挙では、与野党ともに最低賃金の大幅な引き上げを含む、中小企業の賃上げを支援する政策を提案しています。

◇格差是正に向けた急務

連合の集計によると、2024年の春闘での賃上げ率(加重平均)は全体で5.10%に達し、33年ぶりの高水準を記録しました。しかし、物価上昇を反映した実質賃金は低迷しており、6月の統計では27カ月ぶりにプラスに転じたものの、8月には再びマイナスに転落し、不安定な状況が続いています。

そのため、各政党はさらなる賃上げを訴え、特に中小企業対策に注力しています。2024年の春闘では、労働組合員数300人未満の中小企業の賃上げ率は全体の4.45%に留まりました。連合は今月、2025年の春闘の基本構想を発表し、全体としては前年と同じ「5%以上」の要求を維持しつつ、中小組合に対しては「6%以上」を目指し、企業規模による格差の是正を明確にしました。

消費拡大を実現するためには、労働者の約7割を占める中小企業で働く人々の所得向上が鍵となります。各政党は公約で、物価高対策に加え、人件費の原資を捻出しやすい環境を整備することを約束しています。

◇最低賃金の引き上げを訴える

特に、各政党が共通して訴えているのは最低賃金の引き上げです。石破茂首相は、自民党の目標を前倒しして、2020年代に全国平均で時給1500円を目指すと宣言しました。公明党も5年以内に達成するとしており、立憲民主党は段階的な引き上げを、共産党は全国一律の制度を確立するとしています。

しかし、これらの公約を実現するためには、毎年7.3%程度の賃上げが必要になります。中小企業を中心に経営への影響は大きく、日本商工会議所の小林健会頭は、経済の基盤を支える人々が市場から退出し、地方が崩壊することを懸念しています。

さらに、国民の所得を拡大するためには、パート労働者が手取り収入の減少を避けるために就労時間を抑える「年収の壁」の撤廃も重要な課題です。各政党は公約で壁の撤廃を進めるとしていますが、食品スーパー大手のライフコーポレーションの岩崎高治社長は、制度改革なしに最低賃金だけを引き上げると人手不足がさらに悪化すると指摘しています。しかし、万人が納得できる制度設計は難しく、実行力が問われるでしょう。


94%「物価高、収入で補えず」 育英会、困窮家庭を調査―保護者「希望持てる政策を」・衆院選公示

 衆議院選挙が15日に公示されました。物価の高騰対策が主要な争点となる中、あしなが育英会(東京都千代田区)の調査によると、親を亡くしたり、重度の障害を持つなど困難な状況にある家庭の94%が「収入では物価の上昇に追いつけない」と回答しています。保護者からは「希望を持てる政策を」との声が上がっています。

育英会は7月18日から31日にかけて、奨学生の保護者5179人を対象にオンラインで緊急アンケートを実施し、約6割にあたる3107人から回答を得ました。

調査結果によると、昨年の同時期と比較して収入が「増えた」と答えたのは14.5%にとどまり、「減った」と答えたのは28.2%、「変わらない」と答えたのは57.3%で、約85%の家庭が実質的に収入が停滞または減少している状況が明らかになりました。

収入と物価のバランスについて尋ねたところ、「収入が増えて物価の上昇をカバーできている」と答えたのはわずか2.5%で、「カバーできていない」と答えたのは94.2%でした。その中で、「収入が減少してカバーできない」と答えたのは27.1%、「収入が変わらずカバーできない」と答えたのは52.7%でした。

「昨年以上に物価の高騰を感じているか」との質問には99.6%が「感じている」と回答しました。節約している項目について尋ねたところ、食費が最も多い52.8%、次いで服・美容費16.0%、光熱水費13.9%、交際費5.4%となりました。

夫が過労で倒れ介護が必要になり、育英会の奨学金を受けている大学4年生の次女を持つ東京都の40代女性は、物価の高騰で夫の腎臓病専用食が値上がりしていることを憂えています。食費を削減して凌いでおり、女性自身も1日1食で済ませることが多いと言います。彼女は「国は国民の実際の生活を理解していない。若い世代が希望を持てる政策を求めている」と訴えています。


非公認・高木氏、無所属出馬へ 平沢氏は不満にじます

 石破茂首相(自民党総裁)が派閥の裏金事件に関連して処分が重かった一部議員を衆議院選挙で非公認としたことに対し、関係者からは様々な反応があった。旧安倍派の幹部であった高木毅元国対委員長(福井2区)は7日、非公認の決定を「重く受け止めている」と記者団に神妙な面持ちで述べた。彼は無所属での出馬を示唆している。

旧二階派の平沢勝栄元復興相(東京17区)も非公認の対象となった。平沢氏はX(旧ツイッター)に「この問題の決定プロセスには理解しがたい点が多い」と投稿し、その不満を表した。


説いた「真心」どこに 石破新政権

新首相としての石破茂は、自民党総裁選で「勇気と真心で真実を語る」という政治家の理想を訴え続けた。同時に、衆議院解散に際し、「新首相として国民に判断材料を提供する責任がある」と述べ、予算委員会での野党との本格的な論戦の必要性を強調した。しかし、石破首相は先月30日、予算委員会を開催せずに10月9日の解散を決定し、10月27日の衆議院選挙の投票日を発表した。これにより、首相としての「真心」が疑問視されている。

「勇気と真心」は、石破首相の政治的師である渡辺美智雄元副総理からの教えであり、総裁選出馬に際して発表された政策集にも記されている。総裁選の決選投票直前にも、石破首相は「勇気と真心で真実を語る自民党を作る」と宣言した。

また、石破首相は、国民の判断材料として一問一答形式の予算委員会を挙げ、これが先月14日の日本記者クラブでの候補者討論会や地元鳥取県での出馬会見で言及された。しかし、総裁選勝利からわずか3日後に立場を変えた。

予算委員会を開催すれば、野党から旧安倍派の裏金事件や、安倍晋三元首相が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のトップと会っていた問題など、追及されることが避けられない。早期解散が選挙に有利との見方があるため、野党は「論戦から逃げた」と反発している。

今後の焦点は、石破首相が衆議院選挙で裏金議員を公認するかどうかである。重要な点は、衆参両院の政治倫理審査会が5月に73人の議員を対象に審査を行い、自民党も全会一致で賛成したことである。この中には、自民党が4月に正式な手続きを経て処分した議員も含まれている。

国民の代表が集う国会での全会一致は、「国民の総意」を意味するが、誰も出席を申し出ていない。石破首相の言葉を借りれば、国民の総意に反して国会での説明を拒む議員は、「勇気と真心」に欠けると見なされるだろう。

処分済みの議員が政倫審に出席しないことを理由に追加処分することは、「一事不再理」には該当しない。政倫審の審査対象を無条件で公認することは、国会の権威に関わり、自民党に対する国民の反感を強める可能性がある。

最終的には、どのような手続きを踏んで解散しようとも、結果が全てである。石破首相は「三日変化」で真心が問われ、国民がどのような判断を下すか、その「寛容度」が試されることになる。


野田人事にくすぶる不満 他陣営「露骨な論功行賞」

立憲民主党の野田佳彦代表は24日、新執行部を発足させた。小川淳也幹事長、重徳和彦政調会長ら中堅を積極的に登用し、世代交代をアピールした。しかし、野田氏に近い議員が目立つ布陣に、23日の党代表選で他の3候補を支持した議員の間では、「露骨な論功行賞だ」という不満が早くもくすぶっている。

「野田氏の実績と安定感に、小川、重徳両氏の刷新感を組み合わせた」と野田氏周辺は24日、人事の狙いを説明し、党内に理解を求めた。

代表選の決選投票では、野田氏と枝野幸男元代表の国会議員票の差はわずか9票だった。これを受け、枝野氏支持の若手は「緊張感ある結果だ」と指摘し、陣営からは枝野氏の要職起用など党内バランスへの配慮を求める意見が出ていた。

そのため、24日午前に小川氏の幹事長起用が伝わると、大半が枝野氏支持に回ったリベラル系の党内最大グループ「サンクチュアリ」は急きょ国会内で会合を開催。小川氏が告示直前に同グループを離脱して野田氏支持に回った経緯もあり、「けんかを売っているのか」と怒りの声が上がった。

実際、人事が承認された同日午後の両院議員総会では、同グループ所属議員の姿は少なく、拍手もまばらだった。泉健太前代表の陣営幹部も、野田氏が代表就任後の挨拶で「ノーサイド」と呼び掛けたことを引き合いに、「ワンサイド人事だ」と皮肉った。

小川氏の政治手腕が未知数であることも懸念材料となっている。早期の衆院解散・総選挙の可能性が取り沙汰されている中、小川氏は今後、日本維新の会や共産党などとの候補者調整に臨むことになるが、それぞれ100前後の小選挙区で競合しており、一本化に向けた交渉は難航が予想される。

連合関係者は「小川氏では党内を掌握するのは厳しい」と指摘している。党幹部の一人は、大串博志選対委員長が党務総括担当の代表代行を兼務することに触れ、「大串氏が幹事長に代わり、党務全般の責任を持つことになる」との見方を示している。


高市、小泉氏ら男系維持 石破氏「女系天皇」言及も―自民総裁選

自民党総裁選(27日投開票)では、安定した皇位継承の方法も議論の一つとなっている。高市早苗経済安全保障担当相(63歳)を含む多くの候補者が、父系の血統を引く男系男子による継承を支持している。一方で、石破茂元幹事長(67歳)は、母系の血統を引く「女系天皇」の可能性を否定しない立場を取っている。しかし、政治改革や経済政策など他のテーマに覆い隠され、議論は活発ではない。

13日の共同記者会見では、高市氏や小泉進次郎元環境相(43歳)を含む6人の候補者が男系継承の維持を訴えた。高市氏は「現在に生きる私たちの責任であり、未来の世代への責任である」と述べた。

小泉氏は、自民党の皇位継承に関する「所見」に基づき、女性皇族が結婚後も皇室の身分を維持し、皇統に属する男系男子の養子縁組を検討するべきだと述べた。女系天皇については過去の例がなく、保守派からは反対の声が上がっている。

小林鷹之前経済安保担当相(49歳)、加藤勝信元官房長官(68歳)、河野太郎デジタル相(61歳)、茂木敏充幹事長(68歳)も男系継承を重視している。

河野氏は、2020年8月に防衛相だった時に「皇室で男系を維持することにはリスクがある」と述べ、女系の検討も必要だと言及していたが、今回の総裁選では党の見解を尊重する姿勢を示している。

林芳正官房長官(63歳)、上川陽子外相(71歳)は共同会見で男系維持について明言を避け、与野党協議の進行を提案した。上川氏はインタビューで「静かな環境での議論が重要」と述べた。

石破氏は、告示前の8月にインターネット番組で女系天皇の可能性を排除せずに議論するべきだと提案したが、9月12日の取材では「男系の伝統を大切にすべき」と発言を修正した。これは保守派の支持を得るためと見られる。

皇位継承に関しては、2021年12月に岸田内閣の有識者会議が女性皇族が結婚後も皇族として残ること、旧宮家の男系男子が養子として皇籍に復帰することの2案を提示した。しかし、女性・女系天皇の是非については触れず、議論は先送りされた。与野党間の意見の相違もあり、次期衆議院選挙の争点になる可能性がある。


林氏、公認「勝てるかが重要」 安倍氏・教団の調査に慎重―自民総裁選

自民党総裁選に出馬した林芳正官房長官は17日、時事通信を含むインタビューで、派閥の裏金事件に関与した議員の公認について、「勝てる候補であることは重要な要素」と述べ、当選の可能性を優先して判断する意向を示しました。「どのように説明責任を果たすかが、『勝てる候補』を決定する」とも語りました。

安倍晋三元首相が2013年に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の幹部と面談したとされる朝日新聞の報道に基づく調査については、慎重な立場を取りました。「2022年の調査は現職議員を対象に行われた。その時の条件や背景を超える調査が必要になれば、反対ではない」としながらも、「現時点では報道が出た段階であり、即座に行動を起こす段階ではない」と述べました。

林氏が提唱する省庁の再編に関しては、現在の厚生労働省の担当範囲が広すぎると指摘し、「省庁を一つずつ新設するよりも、一度に行う方がコストと労力を節約できる」と強調しました。「全体を検証していく」と述べています。


地力問われる再挑戦 高市早苗経済安保担当相―自民党総裁候補が走る

「『初の女性首相になるのも悪くない』という言葉を胸に、全力を尽くしていく」。9日の記者会見で出馬を宣言し、故安倍晋三元首相から受けた言葉を引用して決意を表明した。前回は安倍氏の全面的な支援を受けて国会議員票で2位だったが、今回は自らの実力が試される。

安倍政策の継承者として自認し、保守層からの支持は依然として強い。この夏、公務の合間を縫って全国20か所以上で講演し、多くの会場が満席となった。

しかし、党内での支持は広がっていない。安倍氏の逝去により多くの支持者が離れ、出馬に必要な20人の推薦人を確保するのに苦労した。

党内での基盤の弱さは、他人との交流よりも独学を好む性格が一因である。安倍氏は以前、「他人に任せるべきことは任せる勇気があれば、さらなる飛躍が期待できる」と述べていた。

「日本列島を強く、豊かにし、次世代に引き継ぐ。総裁選に勝利し、国を導きたい」という強い意志を持って、1時間近い出馬会見を締めくくった。


維新、兵庫知事疑惑で後手 辞職要求に転換、執行部批判も

兵庫県知事の斎藤元彦氏がパワハラ疑惑で内部告発された件について、日本維新の会は彼の辞職と再選挙を要求しています。これまでの曖昧な態度を続けていましたが、厳しい世論を受けて方針を変更せざるを得なくなりました。他の政党と比べて対応が遅れたことは明らかで、党内からも執行部への批判が出ています。

維新の藤田文武幹事長は9日、国会で記者会見を開き、知事の辞職を求める方針を発表しました。「法的な決着はまだついていないが、県庁や関係者との信頼回復は現状では非常に困難だ」と述べ、「辞職を早く求めるべきだった」との批判を受け入れる意向を示しました。

これまで維新は、県議会の特別調査委員会で真実を明らかにすることを待つ立場でした。しかし、知事の問題が連日報道され、斎藤氏を支持していた自民党が早々に彼を見限ったため、維新に対する世論の反感は強まっています。

先月の大阪府箕面市長選で、大阪維新の会が支持する現職が敗北しました。これには、2025年の大阪・関西万博の建設費増加や知事の問題が影響していると見られています。党関係者は「維新が知事を守っていると見られており、状況は厳しい」と述べています。

維新はこれまで、党内の不祥事に対して厳しく迅速に対応してきました。しかし、自民党総裁選後の衆院解散・総選挙が近づく中で、党内には危機感が広がっています。維新関係者は「1ヶ月前に知事を辞任させておくべきだった。党に悪いイメージがつくと、それを払拭するのは難しい」と執行部の遅れを批判しています。


自民岸田派が解散 67年の歴史に幕

自民党の岸田派(宏池会)は3日、政治団体としての解散届を総務省に提出しました。これは森山派に次ぐ2例目であり、67年の長い歴史に終止符を打ちました。

解散は2日付けで行われ、派閥に残されていた資金は党本部への寄付となりました。岸田文雄首相は首相官邸で記者団に対し、「国民の信頼を取り戻すために何が必要かを考え、解散を決定した。今後も努力を続けなければならない」と述べました。


日本政府、中国の意図見極め 領空侵犯「重大な主権侵害」

 日本政府は、中国軍機による領空侵犯を受けて警戒監視を強化し、その意図を慎重に分析する方針です。この侵犯は、中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島周辺ではなく、長崎県沖で発生しました。中国側の対応を踏まえ、分析を急いでいます。

中国軍のY9情報収集機1機が26日、約2分間、長崎県男女群島沖の上空を侵犯し、航空自衛隊は戦闘機を緊急発進させました。林芳正官房長官は27日の記者会見で、この行為を「わが国主権の重大な侵害であり、安全を脅かすもの」と強く批判しました。木原稔防衛相は、「意図と目的を分析しなければならない」と述べ、冷静な対応を示しました。

過去に中国による領空侵犯は2回ありましたが、いずれも軍用機以外で、尖閣諸島沖でした。このため、首相周辺は「意図的なものではないと感じる」と述べました。

一方で、中国軍が日本周辺での電波情報収集を進めており、軍事活動の活発化に対する懸念が高まっています。石原宏高首相補佐官は27日の街頭演説で、「台湾有事が迫っている兆候ではないか」と訴えました。

自民党外交部会の幹部議員は、「自衛隊からの警告を受けながら2分間も領空侵犯を続けたのは、日本の反応を試していたのだろう」と指摘しました。岸田文雄首相の退陣表明後という時期を踏まえ、「偶発的ではなく、計画的かつ戦略的な行為だ」との見解を示す声もあります。

空自幹部は、「日本がこれを軽視すれば、中国はさらなる挑発を行う可能性がある」と警戒を強めています。


自民総裁選、小林氏が出馬表明 「脱派閥徹底、支援求めず」―来月27日投票で調整

自民党の小林鷹之元経済安全保障担当相(49歳)は19日、国会で記者会見を開き、9月の党総裁選への立候補を宣言した。派閥の裏金事件に対する厳しい批判を受け、「新しい自民党への生まれ変わり」を強調し、「脱派閥選挙を徹底し、旧派閥からの支援は一切求めない」と述べた。10人以上の候補が名乗りを上げる中、小林氏が最初に出馬を表明した。

党幹部によると、総裁選の日程は「9月12日告示、27日投開票」で調整中であり、20日の総裁選挙管理委員会で決定される予定だ。9月20日の投開票案もあったが、岸田文雄首相が24日からの国連総会出席を検討しているため、帰国後の日程が望ましいとされた。

小林氏は会見で、政策活動費の透明化を含む政治改革への取り組みを表明し、「能力と経験を重視し、全世代の力を結集する」として党内の幅広い支持を呼びかけた。

主要政策として経済分野を最優先に掲げ、「経済は財政より優先されるべきで、今こそアクセルを踏むべき時」と主張した。産官学の連携を強化し、「世界をリードする戦略産業を育成する」と述べた。

憲法改正については、緊急事態条項の新設と自衛隊の明記を「緊急の課題」と位置づけ、早期の国会提案を目指す意向を示した。

小林氏は財務官僚を経て2012年の衆議院選挙千葉2区で初当選し、現在4期目を務めている。二階派に属しているが、総裁選では安倍、麻生、岸田各派や無派閥の中堅・若手からの支援を受けている。会見には20人以上の国会議員が出席した。

一方、石破茂元幹事長(67歳)は19日、推薦人20人の確保が「より確実になっている」と報道陣に伝えた。関係者によると、22日に出馬表明する可能性がある。河野太郎デジタル相(61歳)は26日に出馬表明する方向で調整中である。

上川陽子外相(71歳)は「立候補準備中」であることを強調し、斎藤健経済産業相(65歳)は出馬を促す声が増えていると述べ、「自分自身の心の声に耳を傾けなければならない」と語った。

党内で期待されている小泉進次郎元環境相(43歳)は、首相と首相官邸で会談を行い、それに先立ち斎藤氏と経済産業省で意見交換を行った。


維新、党勢立て直しに苦慮 「失点」続き、衆院選へ不安

日本維新の会は、党勢の立て直しに苦戦しています。最近の通常国会の終わりに政治改革に関する迷走があり、東京都知事選では目立たなかった。さらに、兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ疑惑が党に暗い影を落としています。これらの「失点」が続く中で、次期衆議院選挙への不安が高まっています。

「次の選挙が心配だ」と、維新の若手議員が最近の状況について語りました。この議員は大阪府以外から選出された衆議院議員です。

世論調査によると、維新の支持率は下降傾向にあります。8月の調査では、約3年ぶりに1.8%と1%台に落ち込みました。2023年4月の統一地方選挙直後には5.9%でした。

改正政治資金規正法の採決では、維新は衆議院と参議院で賛否が分かれました。吉村洋文共同代表(大阪府知事)や大阪の地方議員団はこの一連の流れを問題視し、「総括」の場を設けましたが、馬場伸幸代表が「仲間を後ろから撃たないでほしい」と批判を抑えようとしたため、険悪な雰囲気が漂いました。

7月7日の東京都知事選では、馬場氏ら執行部は前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏を支援することを検討しましたが、最終的には協議がまとまらず、「どの候補も支持しない」という方針を取りました。しかし、世田谷区議が石丸氏を支援するために離党し、党内の足並みの乱れが露わになりました。都議補欠選挙では2選挙区に候補を立てましたが、どちらも敗北しました。

2021年の兵庫県知事選では、維新は自民党と共に斎藤氏を支持しました。執行部の一員は支持率の低下について「それは兵庫の疑惑が原因だ」と指摘しました。藤田文武幹事長は4日に党の兵庫県組織の会合で、斎藤氏の対応に問題があると認定された場合は辞職を求める意向を示しました。

2025年の大阪・関西万博に関しては、当初の予想を大幅に上回る費用が発生する見込みであり、これが万博を推進してきた維新の党勢に影響を与えています。

次期衆議院選挙に向けて、維新は「与党過半数割れ」と「野党第一党」を目標に掲げていますが、現時点での候補擁立は立憲民主党の約190人に対して約160人となっています。反転攻勢の道筋が見えない中、ある幹部は「地道に努力するしかない」と述べています。


個人のメール監視「不適当」 サイバー防御で中間整理―政府有識者会議

政府は6日、サイバー攻撃を事前に防ぐための「能動的サイバー防御」の導入を目指し、有識者会議(座長は佐々江賢一郎元駐米大使)を首相官邸で開催し、議論を中間整理した。個人のメール内容などを監視対象に含めることは「不適切」とされた。

中間整理では、憲法によって保障される「通信の秘密」との調和を図るため、通信事業者の情報を活用する制度設計について慎重な検討が求められた。また、政府の情報活用を監視する独立した第三者機関の設置も提案された。

サイバー攻撃が重要インフラに及ぶと国民生活に甚大な影響があると指摘され、電力やガスなど15業種の民間事業者に対し、政府への報告義務と情報共有を促進することが強調された。

監視対象には、「外国関連の通信分析が特に重要」との見解が示された。

有識者会議は、今後、意見の最終集約を急ぐ方針である。これを基に、政府は今秋の臨時国会で関連法案を提出することを目指している。河野太郎デジタル相は、6日の会合で「民間企業に対する大規模なサイバー攻撃が確認されており、対応能力の向上が急務である」と述べた。


自民に「コバホーク」待望論 刷新期待、ちらつくベテラン―総裁選

期待の声が高まっている中、自由民主党の前経済安全保障担当相、小林鷹之氏(49歳)が党総裁選に出馬するかもしれない。衆議院で4回当選し、閣僚経験もある小林氏は、新しいイメージを求める声に応える形だ。しかし、彼の実力はまだ未知数であり、党内のベテランの存在感も影を落としている。

「いつか国を導く立場になるために学びを積んでいる。今は政治家として力をつける時だ」と小林氏は述べ、総裁選への出馬については明言を避けた。

財務官僚出身の小林氏は、自民党が野党だった時代に政界に入り、実務家としての評価が高い。彼は二階派に属しており、党内での敵は少ない。

「コバホーク」という愛称で知られる小林氏が総裁候補として注目され始めたのは、派閥裏金事件が自民党への批判を呼んだ今春以降のことである。党内では「若手にチャンスを」という意見が強く、選挙に不安を抱える若手議員からは、党の変革を望む声が上がっている。

問題は知名度である。世論調査では他の候補に比べて知名度が低く、党内の重鎮は「国民の間ではほとんど知られていない」と指摘している。

ベテランからの支持もあり、特に麻生派の甘利明前幹事長は小林氏を高く評価している。しかし、一部の党員はベテランの影響力が強すぎることを懸念している。

小林氏に近い若手議員は、「ベテランに頼るのではなく、中堅・若手が支えることが重要だ」と述べている。


対中政策への影響注視 米大統領選で見方交錯も

米国のバイデン大統領が大統領選から撤退するとの発表に対し、日本政府は「どのような展開にも対応できるよう準備している」と外務省幹部が述べ、冷静な対応を示している。民主党でも共和党でも、中国を警戒しインド太平洋地域への関与を継続する方向で、米国に働きかけを続ける方針である。

「戦略的互恵」を推進するため、4年半ぶりの日中戦略対話に努める。

岸田文雄首相は「日米同盟は我が国の外交・安全保障の柱である。今後の動向を注視していきたい」と述べた。

首相は4月に米国を訪問し、バイデン氏との関係を深めている。政府関係者は撤退を「想定内」として冷静に見せているが、閣僚経験者の中には「トランプ前大統領の復帰の可能性に警戒している」との声もある。

バイデン氏は、中国に警戒心を持ち、インド太平洋地域への関与を強化してきた。岸田首相と韓国の尹錫悦大統領をキャンプデービッドに招待するなど、北朝鮮に対する同盟国との連携を重視している。外務省幹部はバイデン氏の撤退について「インド太平洋地域への関心が強かった」と評価し、政府高官は「米国の外交政策に影響を与える可能性がある」と指摘している。

次期大統領の就任は来年1月であり、レームダックへの懸念が高まっている。林芳正官房長官は「日米両政府間で意思疎通を図り、密接に連携していく」と強調した。

バイデン氏が支持するハリス副大統領については、「政策面で大統領を継承する」と首相周辺は見ているが、「リーダーシップが未知数」との声もある。

バイデン氏の撤退に先立ち、自民党の茂木敏充幹事長は「トランプ氏の復帰の可能性が高まっている」と述べた。大統領選に関する政府内の意見は分かれており、政府としては選挙戦を注視するしかない状況である。


中国福建省トップが沖縄訪問へ 7月下旬、玉城知事と面会調整

福建省のトップである周祖翼共産党委員会書記が7月下旬に沖縄訪問を予定していることが16日に明らかになった。この訪問は当初5月初旬に行われる予定だったが、福建省からの要請により延期されていた。訪問団には福州市長の呉賢徳も含まれ、福州市と友好都市関係にある那覇市の「福州園」訪問が計画されている。また、沖縄県が主催する歓迎レセプションの開催も検討されており、関係者によると、玉城デニー知事との面会も調整中である。玉城知事は昨年7月、日本国際貿易促進協会の訪中団の一員として中国を訪れ、北京で李強首相と面会し、福州市で沖縄に関連する地を視察し、周氏らと会談を行った。


島しょ国の法整備支援へ 各国法相らと議論

法務省は10日、太平洋の島しょ国の法整備に関して、各国の法相と議論を行う会議を東京で開催した。この会議では、島しょ国が法務分野で直面している課題を明らかにし、それを日本の支援計画に反映させることを目指している。これは「法の支配」を促進し、中国の覇権主義的な動きに対抗する意図がある。

小泉龍司法相は会議の冒頭で、「太平洋の島しょ国と協力し、この地域での法の支配をさらに推進し、貢献していきたい」と述べた。

法務省は1990年代から、東南アジア諸国を対象に法令の起草支援や人材育成を行う「法制度整備支援」を実施してきた。現在、太平洋の島しょ国に対しても同様の支援を行うことを検討しており、具体的には土地や戸籍制度の整備、再犯防止策の推進などが考えられている。


イメージ刷新へ若手擁立論 自民総裁選、小林鷹之氏らの名

自由民主党の派閥による裏金問題が党のイメージに傷をつけた中、9月に予定される党総裁選で若手議員を推すべきだという意見が党内で広がっている。小林鷹之前経済安全保障担当相(49歳)などの名前が挙がっているが、世論の批判を避けるための策略が見え隠れしており、実現可能性は不明確である。

小林氏は2日に経団連の会合で経済安保について講演し、会場は満席で関心の高さが伺えた。小林氏は月刊誌のインタビューで「機会があれば挑戦したい」と総裁選への意欲を示している。党のベテランからは「資質があり、若手からの期待も大きい」と支持されている。

若手議員の推進論は、来年10月の衆議院議員の任期満了が近づく中、裏金問題による強い逆風を受けている自民党議員の焦りを反映している。小林氏以外にも小泉進次郎元環境相(43歳)、福田達夫元総務会長(57歳)、小倉将信前こども政策担当相(43歳)などの名前が囁かれている。閣僚経験者からは「若手が前に出て、党の新しいイメージを打ち出すべきだ」との期待が寄せられている。

しかし、現在の衆議院の勢力を考慮すると、自民党総裁選は実質的に首相を選ぶことになる。経済官庁の幹部は「経験不足が政治の不安定化を招く」と懸念を表している。小林氏の講演に出席した人からは「話し方が硬すぎる」という不満の声も聞かれた。

総裁選では、全国100万人以上の党員に向けた政策パンフレットの郵送などに「数億円単位」の資金が必要となり、「結局は有力者の支援がなければ戦えない」という意見もある。党の中堅議員は「彼らがどれだけ真剣かが問われる」と述べている。


困惑・批判、政権内で拡大 「場当たり」「猛暑に間に合わず」―電気代補助

岸田文雄首相の突然の電気・ガス料金補助金再開宣言に、政府と与党内で混乱と批判が広がっている。これは、丁寧な意思決定プロセスを経ず、予想される猛暑の7月分に間に合わないためである。自民党総裁選における再選戦略の一環と見られ、首相の政権浮揚への焦りが透けて見える。

「消費者物価指数を毎月0.5ポイント下げる効果を目指したい。財源は予備費を活用する」と首相は25日、公明党の山口那津男代表との会談で、8月から10月の電気・ガス料金補助金再開の計画を説明した。

電気・ガス料金の支援は5月末に終了していたが、首相は21日の記者会見で「酷暑乗り切り緊急支援」として再開を宣言。この決定は限られた官邸幹部の間で進められ、経済産業省や経済対策の中心人物である新藤義孝経済再生担当相も事前に知らされていなかった。

しかし、酷暑対策として掲げられたものの、対策時期が夏季とずれていることから、後付けの印象を拭えない。派閥裏金事件への批判が続く中、定額減税に続く物価高対策として政権を盛り返そうとする意図が見える。官邸幹部は「補助を再開すれば皆が喜ぶだろう」と率直に述べた。

自民岸田派の松山政司参院幹事長は25日の会見で「非常に良い決断」と評価したが、与党内では「岸田降ろし」の動きがあり、肯定的な見方は少数派だ。自民党政調会合では、「酷暑対策なら7月から9月が適切だ」「エネルギー政策が行き当たりばったりではないか」という批判が相次いだ。公明党の会合では、赤羽一嘉前国土交通相が「唐突な官邸の発表は問題がある。もっと丁寧に進めてほしい」と不満を示した。

野党からの批判も強まっている。立憲民主党の岡田克也幹事長は、「国会終了と総裁選が近づく中での復活は、総裁選を意識したものとしか思えない」と述べた。国民民主党の玉木雄一郎代表も「6月と7月を空白にする意味がわからない。経産省も困惑している」と疑問を投げかけ、「場当たり的で遅すぎ、効果も限定的だ。これは政権の迷走を象徴している」と批判した。


首都決戦、届け出最多 小池都政の評価が争点―都知事選告示

任期満了に伴う東京都知事選が20日に告示され、17日間の首都決戦が始まった。午後2時半時点で56人が届け出て、過去最多だった前回の22人を大きく上回った。現職で3選を目指す小池百合子知事(71)に、前参院議員の蓮舫氏(56)ら新人が挑む。2期8年の小池都政に対する評価が主な争点となり、子育て支援策や行財政改革などを巡って論戦が繰り広げられる見通しだ。投開票は7月7日。

 小池氏は公務を優先するとして、告示日の選挙活動は新宿区内の事務所でのあいさつのみにとどめた。知事として取り組んだ子育て支援策を振り返り、現金給付などの対象に「所得制限を外すという大きな決断をし、みんなで子どもを育てていこうという機運は国をも動かしている」と実績を強調した。

 対して蓮舫氏は中野駅前で演説。少子化が進む背景には経済的な事情が大きいとして、まずは安定雇用をつくるとともに、奨学金の負担を減らすための政策実行に注力すると語った。加えて、行財政改革への意欲も強調。「都の財政のガラス張りを実現したい」と訴えた。

 都知事選には、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)、タレントの清水国明氏(73)、元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)らも立候補。石丸氏は、政治に興味関心を向けさせるための「政治再建」を主張。清水氏は、都民目線の行政の実現を唱え、田母神氏は災害に強い街づくりや教育改革を訴える。

 政党の動きでは、自民、公明、国民民主各党が小池氏の支援に回り、立憲民主、共産、社民各党は蓮舫氏を支える。選挙結果は、岸田文雄首相の政権運営や衆院選に向けた各党の戦略に影響を与えそうだ。


韓国に再び抗議 竹島南方調査で外務省

外務省は11日、島根県の竹島(韓国名:独島)南方の日本の排他的経済水域(EEZ)で韓国の調査船が海洋調査を実施したとして、韓国に対して再度抗議を行った。鯰博行アジア大洋州局長は、在日韓国大使館の金壯炫次席公使に電話で「受け入れがたい」と強く抗議した。また、在韓国日本大使館も韓国外務省に同様の申し入れをした。

韓国の調査船は6日に引き続き、11日にも海洋調査を行った。日本外務省は6日にも即時中止を求める抗議をしていた。


自民内で首相退陣要求 横浜市連会長「身を引いて」

自民党横浜市連が4日に同市内で開いた会合で幹部から、「党の顔」を代えるために岸田文雄首相(総裁)の退陣を求める声が上がった。党支持率の低下を踏まえたもので、首相に対する党内の厳しい空気を示した。

 発言したのは市連会長で横浜市議の佐藤茂氏。現状を「(自民が下野した)2009年の政権交代時に匹敵する」と指摘した上で、「政治資金規正法改正にめどが付いた今、総裁自ら身を引く苦渋の決断をし、強いリーダーシップの取れる新進気鋭の総裁を選び、変革の証しを示さなければならない」と訴えた。

 会合に出席した小泉進次郎元環境相(神奈川県連会長)も09年の衆院選に触れ、「あの時より怖い。一人ひとりが危機感を持って変わっていかなければいけない」と強調した。


規正法、週内の衆院通過断念 公明硬化、パー券「5万円超」迫る―自民、再修正案の調整難航

自民党は30日の衆院政治改革特別委員会の理事懇談会で、派閥裏金事件を受けた政治資金規正法改正案の再修正案の提示を見送った。公明党が態度を硬化させたためで、改正案の週内の衆院通過を断念した。31日に再修正案を各党に示し、改めて公明などの理解を求める方針。今国会中の成立に向け、6月4日にも衆院を通過させたい考えだ。

 公明の山口那津男代表は30日午前の党会合で、自民が29日に示した修正案に賛同できないと表明。自民が難色を示してきた政治資金パーティー券購入者の公開基準額「5万円超」への引き下げと、政策活動費の使途明細書添付を挙げ、「もう一段、自民党の英断を促す」と受け入れを強く求めた。

 公明は自民案に賛成する方向で検討してきたが、支持層の反発を懸念してハードルを上げたとみられる。自民がどう歩み寄るかが焦点だ。

 特別委は30日の午前と午後に理事懇を計2回開いたが、自民は公明の硬化を受けて再修正案を示さなかった。自民理事の大野敬太郎氏は記者団に「努力したが党内調整がつかなかった」と釈明した。

 立憲民主党や日本維新の会は共通の主張として(1)企業・団体献金の禁止(2)政策活動費の廃止―などを求めている。理事懇で自民は企業・団体献金に関し、「禁止はできないが、真摯(しんし)に何か対応できるか考えたい」と伝えた。


「育成就労」法案、参院審議入り 人権侵害継続に懸念も

技能実習に代わる外国人材受け入れ制度「育成就労」を創設する入管難民法などの改正案が24日、参院本会議で審議入りした。人手不足の分野で未熟練の人材を受け入れ、中長期の在留につなげる狙いがあり、岸田文雄首相は「外国人にとって魅力ある制度を構築し、選ばれる国になることが必要不可欠だ」と強調。ただ、立憲民主党などは人権侵害が生じる構造は変わらないと批判した。

 技能実習は、途上国に技術や知識を伝える「国際貢献」を目的としたが、安価な労働力の確保に利用されてきた実態がある。勤務先を変える「転籍」を原則として認めず、過酷な労働環境下で失踪する例も相次いだ。

 育成就労は、一定の条件を満たせば本人の意向で転籍を容認。首相は「より適切に労働者としての権利を保護する」と説明した。ただ、分野によって最長2年の転籍制限が可能なため、野党側は「最初の職場に張り付かざるを得ない人が大多数になる」と指摘する。

 外国人が来日時、母国の「送り出し機関」への手数料などで借金を抱えるケースも問題視されてきた。立民の石橋通宏氏は「諸費用を全て日本側が負担する制度に改革すべきだ」と迫ったが、小泉龍司法相は「手数料の上限基準を設け、負担軽減を図る」と答弁した。

 改正案には、納税などの公的義務を故意に怠った場合、永住許可の取り消しを可能にする規定も盛り込まれた。石橋氏は「差別・偏見を助長する。日本は選ばれない国になる」と撤回を主張。これに対し、首相は「(故意の不履行を)容認することは、義務を履行する大多数の永住者との間で不公平感を助長する」と必要性を訴えた。


「思い実った」「苦しみ続く」 共同親権、当事者に賛否

民法などの改正法成立により、父母双方が離婚後も子どもの親権を持つ「共同親権」導入への道が開かれた。新制度は2026年までに始まる見通しだが、離婚により子どもと離れて暮らす当事者らからは、導入を巡り賛否の声が聞かれた。

 「感無量だ」。神奈川県の会社員男性(47)は18年に離婚し、元妻と暮らす子どもと会えない日々が続く。子どもは会えない間に18歳を迎え、成人した。男性は改正法成立を「長年の思いが実り安心した」と歓迎する一方、「家裁がDV(家庭内暴力)被害の訴えなどについて正しく判断できるのか疑問だ。新制度が始まっても、共同親権が適用されないケースも出てくるのでは」と懸念を示す。

 別居状態が続き子どもに約7年会えていない千葉県の会社員女性(41)は17日午後、参院本会議の傍聴席で成立の瞬間を見届けた。「やっとだ」とほっとした表情を浮かべ、「今後は子どもの利益最優先で考えられるようになってほしい」と期待を示した。

 導入への反対意見も根強い。ネット署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」では、反対の電子署名が17日までに24万人を超えた。サイトには「精神的、身体的暴力を受けている母親や、子どもたちが逃げられなくなる」「DV被害者やその子どもが離婚後も苦しめられ続ける」などの声も寄せられている。

 反対する3団体は参院法務委員会で改正案が可決された16日、連名で声明を公表。法案審議過程で家裁の人的体制の不十分さなどが明らかになったとして、「議論が煮詰まったとは到底言えない状況下で、共同親権ありきで採決が急がれた」と批判した。


日米、指揮連携へ協議加速 自衛隊統合司令部、来春発足―改正法成立、「一体化」懸念も

陸海空3自衛隊の運用を平時から束ね、米国との共同作戦の調整も担う「統合作戦司令部」創設を柱とする改正自衛隊法などが10日の参院本会議で成立した。240人体制で、来年3月発足を予定。日米両政府は指揮統制面の連携強化へ協議を加速させる。野党からは日米の過度な「一体化」が進めば自衛隊の指揮権の独立性が保てなくなるとの懸念が出ている。

 木原稔防衛相は10日の記者会見で「同盟国・同志国の司令部との情報共有や運用面での協力を一元化でき、統合運用の実効性が向上する」と強調した。司令部は防衛省がある東京・市谷本村町に設置し、トップの「統合作戦司令官」は陸海空幕僚長と同格とする。陸上総隊、自衛艦隊、航空総隊などの部隊を指揮する。

 2022年に策定した安全保障関連3文書は「統合運用の実効性強化」を掲げた。常設の司令部を新設し、統合幕僚長と統合幕僚監部が担ってきた自衛隊の運用や、作戦面での対米調整の機能を移すことが決まった。

 日米共同対処が想定される反撃能力(敵基地攻撃能力)行使では、標的選定など膨大な調整が必要となる。4月の日米首脳会談では「より効果的な日米同盟の指揮統制」を実現することで一致した。

 現在、在日米軍の作戦計画立案や部隊指揮は米ハワイのインド太平洋軍司令部が担っているが、米軍は時差などの弊害をなくすため、日本国内に窓口を設ける方向で態勢の見直しを進めている。

 在日米軍司令部の権限拡大や、新たな統合任務部隊を編成して日本に司令部を置く案が議論されており、夏までに方針を固める見通し。日米は外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、連携を確認する。

 統合幕僚長は引き続き防衛相を補佐。米軍制服組トップの統合参謀本部議長と軍事戦略面での調整を担う。

 国会審議では野党から、自衛隊が米軍の指揮下に組み込まれかねないとの懸念が示された。木原氏は「自衛隊、米軍がそれぞれ独立した指揮系統に従って行動することには何ら変更はない」と繰り返し、平行線だった。

 改正法には与党のほか、立憲民主党なども賛成した。サイバー分野などの民間高度人材を好待遇で採用する「特定任期付自衛官制度」新設も盛り込まれた。


中東・ウクライナに懸念表明 日伯首脳、気候変動で連携―共同声明、「中国」触れず

岸田文雄首相は3日午前(日本時間同日夜)、ブラジルのルラ大統領と首都ブラジリアの大統領府で会談し、共同声明を発表した。領土保全や武力行使禁止など国連憲章の原則を順守する重要性を強調し、中東情勢に「深刻な懸念」、ウクライナ情勢に「重大な懸念」を表明。地球温暖化対策での連携を打ち出した。

 パレスチナの国連正式加盟を支持する方針も示した。ウクライナ関連では核の使用や威嚇を認めず、「公正かつ永続的な平和」に向けた外交努力を訴えた。

 一方で、日本が懸念を強める中国の覇権主義的な動きへの直接の言及はなかった。海洋秩序を定めた国連海洋法条約を支持する立場は明記したが、「中国」や「南シナ海」といった文言は入らなかった。中国はブラジルの最大の貿易相手国で、密接な関係を持つことが背景にあるとみられる。


衆院3補選28日投開票 与野党、追い込みに全力

衆院東京15区、島根1区、長崎3区の補欠選挙は28日、投開票される。岸田文雄首相(自民党総裁)と立憲民主党の泉健太代表は27日、唯一の与野党対決となった島根1区へそれぞれ入り、最後の追い込みに全力を挙げる。派閥裏金事件を受けた初の国政選挙で、結果は首相の政権運営や衆院解散戦略を左右しそうだ。

 3補選はいずれも「政治とカネ」の問題などが取り沙汰された前職の辞職・死去に伴う。島根1区は自民が新人、立民が元職を擁立。東京15区は自民が擁立を断念し、立民、日本維新の会、参政党、諸派、無所属の新人・元職9人が乱立した。長崎3区は立民と維新の候補が一騎打ちで争う。

 首相は27日、東京都内で開かれる連合のメーデー中央大会に出席した後、松江市内などで街頭演説する意向だ。首相の島根応援は2回目で、自民は小渕優子選対委員長らも投入する。

 泉氏もメーデー大会後に島根入り。辻元清美代表代行も松江市で街頭演説し、大串博志選対委員長は長崎県大村市で支持を訴える。維新は馬場伸幸代表と吉村洋文共同代表(大阪府知事)が都内を回り、参政党なども支援を呼び掛ける。


国政補選、政権浮沈に影響 福田・菅首相退陣の引き金―衆院補選

自民党派閥の裏金事件後、初の国政選挙となる衆院3補欠選挙は、「政治とカネ」の問題が最大の争点だ。逆風下の自民は2選挙区で候補擁立を見送り、既に負け越しが確定する異例の展開。過去には補選の結果が引き金となり、時の首相が退陣に追い込まれた事例もある。岸田文雄首相にとって、求心力を保てるか正念場の戦いとなる。

 「残り1週間余りだが、さらなる力添えを心からお願いする」。自民の松山政司参院幹事長は19日の党会合で、唯一候補を立てた島根1区の勝利に全力を挙げるよう所属議員に求めた。同氏は組織票を固めるため、この直前まで現地入りしていた。

 島根補選は、細田博之前衆院議長の死去に伴う。自民にとっては、有利とされる「弔い選挙」だ。しかも、島根は1996年の小選挙区比例代表並立制の導入以降、自民が小選挙区で負けたことのない「保守王国」。本来なら「勝って当然」(関係者)の選挙だが、細田氏が裏金事件の中心となった清和政策研究会(安倍派)の会長を務めていた影響などで、苦戦が伝えられている。

 過去の補選では、結果が政権の命運を左右したこともある。顕著な事例は、2021年4月の衆参3補選・再選挙だ。自民は不戦敗を含めて全敗。菅義偉首相(当時)は求心力が低下し、同年9月の党総裁選への出馬断念に追い込まれた。

 08年4月の衆院補選も、保守地盤の山口2区で自民が敗北。福田康夫首相(同)は同年9月に退陣し、自民は翌09年の衆院選で政権を失った。

 一方、安倍政権下の19年4月の衆院2補選は、自民が全敗したものの、同年夏の参院選で与党は改選過半数を確保して乗り切った。

 岸田政権下では、23年4月の衆参5補選で、自民が当初の劣勢予想を覆して4勝した。翌5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)による浮揚効果もあり、政府・与党内で一時、衆院解散・総選挙の「好機」との声が広がった。

 今回、岸田首相は島根で勝利を収め、反転攻勢のきっかけとしたい考え。ただ、敗北すれば打撃は大きく、党内で「岸田降ろし」が表面化する可能性もある。党中堅は「『選挙の顔』を変えるのが解散の前提になる」と指摘した。


福建省トップ、異例の沖縄訪問 5月上旬、玉城知事と面会

中国福建省トップの周祖翼・共産党委員会書記が5月上旬、沖縄県を訪問する予定であることが12日、分かった。玉城デニー知事と面会する方向で、省トップの沖縄訪問は異例とみられる。複数の関係者が明らかにした。

 周氏は、福建省福州市の呉賢徳市長を含む友好訪問団を代表して来日する。沖縄のほか、長崎や大阪、東京各都府県を訪れる見通し。

 玉城知事は東アジアの緊張緩和に貢献するとして自治体外交に取り組んでおり、昨年7月に中国を訪問。北京市で日本財界の訪中団と共に李強首相に面会、福州市では周氏らと会談した。玉城氏の訪中に先立ち、習近平国家主席が「(福建省は)琉球との付き合いが深い」と党機関紙・人民日報を通じて発信し、注目された。

 福建省は、習氏がかつてナンバー2の省長を務めたゆかりの地。沖縄県によると、同省と県は600年以上にわたる交流の歴史がある。


政治資金規正法改正「厳格な内容実現」 岸田首相、自民刷新対話に初参加―裏金謝罪も批判相次ぐ

 岸田文雄首相(自民党総裁)は6日、熊本市を訪れ、派閥裏金事件を受けた「政治刷新車座対話」に出席した。後半国会の焦点となっている政治資金規正法改正を目指す方針を重ねて示した上で、「厳格な内容を実現することで、国民の信頼回復につなげたい」と表明した。

 首相が刷新対話に参加したのは初めて。裏金事件について「大きな政治不信を招き、心からおわびする」と謝罪。「危機感を持って党再生に取り組まなければならない」と訴えた。

 4日に決定した関係議員の処分に関しては「政治責任、道義的責任も考えなければならない」と説明した。

 出席者からは「多くの国民の怒りは今、沸点に達している」「女性局や青年局の問題も噴出し、議員としての倫理観が欠如している」などと批判が相次いだ。


北朝鮮サイバー対応で連携 日米韓

日米韓3カ国は29日、北朝鮮のサイバー活動に関する外交当局間の作業部会を米ワシントンで開いた。核・ミサイル開発の資金源になっているとされる北朝鮮の不正なサイバー活動に対する懸念を共有。IT技術者への対応を含む取り組みについて意見交換し、引き続き緊密に連携することを確認した。日本外務省が30日発表した。


新マイナカード26年にも導入 性別記載なし、生年月日は西暦―呼称変更も検討・政府

政府は、マイナンバーカードが2026年以降に更新時期を迎えるのに合わせ、券面デザインを一新する方針だ。性別表記を削除し、生年月日は元号から西暦に変更。氏名には振り仮名を付け、ローマ字も併記する。一方、個人番号を使わない活用法もあることから、「マイナンバー」を含まない新たな呼称への変更を検討する。

 マイナカードは16年に交付が始まり、有効期間は10年。カードの切り替えが必要になるのを機に、政府は新カードの導入を目指す。新カードでは、性的少数者に配慮する観点から性別表記を削除。性別情報はカード内のICチップに記録し、国が開発するアプリで読み取れるようにする。政府はこうした内容を盛り込んだ関連法改正案を国会に提出しており、今国会での成立を目指す。

 24年度にはサービス拡大を見据え、海外に転出した人もカードを継続して利用できるようになる。これに伴い、新カードには氏名のローマ字読みを追加し、生年月日は西暦表記とする。臓器提供の意思表示欄は表面から裏面に移す。

 ICチップに搭載された電子証明書の有効期間は、18歳以上の場合、現在の「5年」からカードと同じ「10年」に延長。カードの有効期限の「3カ月前」からとなっている更新手続きは「1年前」から可能になる。

 カード保有者には、有効期限が近づくと通知書が届く。更新手続きは無料。オンラインや郵送で申請し、自治体窓口などで新カードを受け取る。

 一方、カードの呼称を巡っては「マイナンバーと混同されている」との懸念が出ている。河野太郎デジタル相は今月19日の記者会見で「新たな呼称を公募を経て検討する」と表明。今後、公募のスケジュールなどを詰める。


火種くすぶる日韓 正常化1年、「徴用工」が影

 岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領が両国関係正常化に合意した昨年3月の会談から16日で1年がたった。相互に首脳が往来する「シャトル外交」が復活し、安全保障や経済分野の懸案で進展が見られた。ただ、元徴用工訴訟で敗訴した日立造船の供託金が今年2月に原告側に支払われ、自民党の保守系議員が反発するなど火種はくすぶる。

 ◇首脳会談7回

 林芳正官房長官は15日の記者会見で、日韓の関係改善について「わが国の戦略的利益に資する」と強調。1965年の国交正常化から来年で60年となることに触れ、「協力をさらに堅固で幅広いものとすべく緊密に意思疎通する」と語った。

 関係改善は、徴用工訴訟の賠償を韓国の財団が肩代わりする解決策を尹政権が昨年3月6日に発表したのが直接の契機だ。首相はこれを高く評価し、10日後に東京で首脳会談が実現した。

 軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化、日本の対韓輸出管理の厳格化措置解除と矢継ぎ早に動きがあり、年末には通貨スワップ(交換)協定が再締結され、米国を介した北朝鮮ミサイル情報の即時共有も開始。65年以降で最悪と言われた関係は劇的に変わった。

 首脳会談は昨年だけで7回に及ぶ。首相は一時模索した今月の訪韓を見送ったが、周辺は「4月の韓国総選挙後のタイミングで再調整している」と明かす。来年に向けては、新たな「日韓共同宣言」発表や尹氏の国賓来日も取り沙汰されている。

 ◇韓国総選挙もカギ

 一方で、徴用工問題は引き続き影を落とす。日立造船のケースでは関連訴訟で初めて日本企業に実害が生じた。裁判所に供託金を預けていたのは同社だけという事情を踏まえ、日本政府は「特殊な事案」として事を荒立てたくない考えだが、自民の保守系議連「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」は近く首相に対抗措置を求める方針だ。

 首相は昨年5月に訪韓した際、徴用工問題について「心が痛む」と表明したが、直接的な謝罪や反省の表現は避けた。これに対して韓国側では不満が残る。

 韓国総選挙は4月10日が投開票日。尹氏を支える「国民の力」が引き続き少数与党に甘んじれば、対日融和政策を批判する革新系の最大野党「共に民主党」が勢いづく展開が予想される。ある自民党重鎮は「今回の選挙で日韓関係を後戻りさせてはならない」と漏らした。



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