田辺桃子「人の記憶に何かを残せる俳優に」 映画「DitO」で好演、海外映画祭で高評価
ドラマや映画への出演が途切れることなく続き、その出演作はシリアスからコミカルまで幅広い。現在放送中の「笑うマトリョーシカ」(TBS系)での演技も注目されている田辺桃子(24歳)は、「人の記憶に何かを残したり、人生が変わるようなきっかけを提供できる俳優になりたい」と、自らの理想像を語る。映画「DitO(ディト)」(全国で順次公開中)では、フィリピンで奮闘するプロボクサーの娘役を演じ、印象的な演技を披露している。
同作は、俳優の結城貴史が初めて監督を務め、主演も担当したヒューマンドラマである。フィリピンで再起を図るプロボクサー、神山英次(結城)のもとに、娘の桃子(田辺)が現れ、母のナツ(尾野真千子)の死を伝える。同地で暮らし始めた父娘は、ぎこちなさを乗り越えて徐々に距離を縮めていく。そして、英次にとってのラストチャンスとなるボクシングの試合が訪れる。
結城と田辺は、田辺が14歳の時に主演し、結城がラインプロデューサーを務めた短編映画「半分ノ世界」(2014年)で知り合い、以来の仲だ。「いつか俳優として共演したい」と結城に請われていた田辺は、「その言葉を『頑張れ』と受け取っていましたが、実際に脚本をいただき、『本気で夢を叶える人なんだ』と感じました。監督兼主演で、撮影は海外。結城さんが背負う重圧はいつも以上に大きかったですが、それが私にも全力で取り組むきっかけとなりました」と語る。
撮影中は、親子の距離感を演出するため、結城とは意図的に話をしないようにしていた。「カットがかかると、すぐに素の自分に戻れる人もいますが、私はオフの時の関係性が映像に影響すると信じています。仲が良すぎると、その雰囲気が画面に出てしまうため、お芝居に関する相談はほとんどしませんでした」と田辺は述べる。
異なる環境での撮影は新鮮であり、共演したフィリピン人俳優の自然な演技は新たな刺激となった。特に、セリフを言う際の目線の使い方が参考になった。「日本ではセリフを強調する傾向がありますが、彼らはとても自然で、日常会話のように見えます。その結果、セリフが作り物に聞こえないように感じました」と田辺は振り返る。
「DitO」は海外のインディペンデント映画祭に出品され、多くの賞を受賞した。田辺もローマで開催されたリエティ&サビナ映画祭やニューヨーク国際映画祭製作者フェスティバルで最優秀女優賞を受賞し、演技が高く評価されている。
海外での活躍も期待される田辺は、「『日本』や『外国』という枠にとらわれず、表現者として必要とされる場所へ行きたい。国や言語が異なっても、信頼される仕事をしたい」と述べる。今後の展望について尋ねられると、「特定の得意分野を作らず、さまざまなキャラクターに挑戦したい。異なるジャンルの人々と協力し、知らない世界を学び、それを自分の作品に反映させたい」と答えた。